彼女の顔に面と向ったとき、日没前の風景の中で、くっきり浮かび出た山頂の線や地平線のきらめきが、一瞬光度をたかめ静けさにみちた空気の中に消えんとする最後の異常に強い光を放つときのような、美のエネルギーが彼女の顔から彼の方をめがけて、放出されるのを感ずるのであった。
野間 宏 / 顔の中の赤い月「暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)」に収録 ページ位置:5% 作品を確認(amazon)
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恋に落ちる
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前後の文章を含んだ引用
......こまかく観察するというようなことは出来なかったが、彼は廊下の暗い空気の中に浮き出るようにして近づいて来る彼女の顔や、エレヴェーターの中の多くの人々の背に挟まれた彼女の顔に面と向ったとき、日没前の風景の中で、くっきり浮かび出た山頂の線や地平線のきらめきが、一瞬光度をたかめ静けさにみちた空気の中に消えんとする最後の異常に強い光を放つときのような、美のエネルギーが彼女の顔から彼の方をめがけて、放出されるのを感ずるのであった。彼は最初はそのような彼女の顔ばかりに気を取られていたが、最近になって彼は彼女の顔の表情の中にある一種苦しげなものが、彼女の顔に反してじみな黒っぽいスーツをつけた......
単語の意味
風景(ふうけい)
風景・・・自然の景色。目の前に広がる眺め。その場の情景。
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恋に落ちるの表現・描写・類語(好きのカテゴリ)の一覧 ランダム5
女の本能が生まれて始めて芽をふき始めた。
有島武郎 / 或る女
本気で私に愛想をつかしてほしい。会社で会って私が話しかけても無関心な瞳で普通に言葉を返すだけになれば、私はつめたい大理石のうえに寝そべり、石の表面に自分の体温がほんのりと移っていくようにニのことを好きになるかもしれない。
綿矢 りさ / 勝手にふるえてろ amazon
寝ても起きても夢の中にあるように見えた。
有島武郎 / 或る女
ミュウに髪を触られた瞬間、ほとんど反射的と言ってもいいくらい素速く、すみれは恋に落ちた。広い野原を横切っているときに突然、中くらいの稲妻に打たれたみたいに。それはおそらくは芸術的天啓に近いものであったにちがいない。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
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「好き」カテゴリからランダム5
オレには彼女にだけ太陽の光が集まっているように見えた。人間って不公平にできているんだなあ、と、椿(人名)の周りにいる女子を見てしみじみと思った
朝井 リョウ / 燃えるスカートのあの子「もういちど生まれる (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
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