鈴木君と迷亭君の帰ったあとは木枯（こがら）しのはたと吹き息（や）んで、しんしんと降る雪の夜のごとく静かになった。

行ってみる間は何か心が燃えながら、行ってみるとどかんと淋しくなる気持ち

時々門前を人力（じんりき）が通るが、通り過ぎた後（あと）は一段と淋しい。

食い残された食物の器とか、袋なしに転がっている巻煙草とか、トランプとか、碁石とか、それらの散らかっている座敷の様子が、いかにも何か一段落ついたと云う感じを与えた。

つづいて「僕も帰る」と口々に玄関に出る。寄席（よせ）がはねたあとのように座敷は淋しくなった。

時々門前を人力（じんりき）が通るが、通り過ぎた後（あと）は一段と淋しい。

（開発が途中で止まった街）あれ以来、どこからも工事の音はしなくなった。 　駅前では、相変わらずマンションと同時に完成したクリーンセンターの白い時計がこちらを見つめている。私はあの時計が嫌いだった。私たちの頭上で時を刻んでいるはずなのに、あれができてから、私たちの時間が止まった気がする。《…略…》遠くに時計台が見えた。 　この街の時間を吸い取っているようなあの時計台は、この白い街で一際真っ白な建築物で、こちらを見つめているように見える。

離れ小島におしやられたような孤独な思いが胸の中でとぐろを巻いた。

淋しさが、ひときわ心の底にしみ入る

恐ろしいほど孤独