TOP > 風景表現 > 地上・陸地 > 再開発エリア(街が変わる)
(開発が途中で止まった街)あれ以来、どこからも工事の音はしなくなった。 駅前では、相変わらずマンションと同時に完成したクリーンセンターの白い時計がこちらを見つめている。私はあの時計が嫌いだった。私たちの頭上で時を刻んでいるはずなのに、あれができてから、私たちの時間が止まった気がする。《…略…》遠くに時計台が見えた。 この街の時間を吸い取っているようなあの時計台は、この白い街で一際真っ白な建築物で、こちらを見つめているように見える。
村田 沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」に収録 ページ位置:34% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
再開発エリア(街が変わる)
時間が止まったように虚しい日々
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......た街に急に連なった新しいマンションの一群に、私たちは沸き立った。父も、喜んで何度もモデルルームを冷やかしに行っていた。 けれど、それがこの街の成長の最後だった。あれ以来、どこからも工事の音はしなくなった。 駅前では、相変わらずマンションと同時に完成したクリーンセンターの白い時計がこちらを見つめている。私はあの時計が嫌いだった。私たちの頭上で時を刻んでいるはずなのに、あれができてから、私たちの時間が止まった気がする。 早く通り過ぎたくて、足を速める。マンションの前には凝ったオブジェが並んでいて、誰もいない美術館みたいで怖いのだ。 半分切断されたような岩や、血管のような赤いパ......<中略>......吹の首筋の汗の味を知ってしまった舌が、浅ましく疼く。 席替えというイベントに、教室は揺れるようにざわめき続けていて、私は船酔いしたような気持ちで窓の外を見た。 遠くに時計台が見えた。 この街の時間を吸い取っているようなあの時計台は、この白い街で一際真っ白な建築物で、こちらを見つめているように見える。私は窓から目を逸らし、自分の上履きに視線を戻した。横からは、荒木くんと三宅くんの笑い声が、まだ、続いていた。 帰り道、信子ちゃんと一緒になった。周りに誰もいない......
ここに意味を表示
再開発エリア(街が変わる)の表現・描写・類語(地上・陸地のカテゴリ)の一覧 ランダム5
田畑が成す緑の景色に駅舎や道路など新しい建造物の灰色が囲まれ、自然と人工の調和が彼には近未来を感じさせた。
羽田 圭介「ミート・ザ・ビート (文春文庫)」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
時間が止まったように虚しい日々の表現・描写・類語(寂しい・喪失感のカテゴリ)の一覧 ランダム5
電気時計を眺めている限り、少くとも世界は動きつづけていた。たいした世界ではないにしても、とにかく動きつづけてはいた。そして世界が動きつづけていることを認識している限り、僕は存在していた。たいした存在ではないにしても僕は存在していた。人が電気時計の針を通してしか自らの存在を確認できないというのは何かしら奇妙なことであるように思えた。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
彼女がアパートを出ていってしまってから既に一ヵ月が経っていた。その一ヵ月には殆んど何の意味もなかった。ぼんやりとして実体のない、生温かいゼリーのような一ヵ月だった。何かが変ったとはまるで思えなかったし、実際のところ、何ひとつ変ってはいなかったのだ。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
「地上・陸地」カテゴリからランダム5
「だって、なんかどんどん変わっていくんだもん。せっかく見つけた遊び場も、すぐ工事現場になっちゃうし。引っ越してくる前の街はそんなことなかったもん。なんか変。生き物みたい」
村田 沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」に収録 amazon
「寂しい・喪失感」カテゴリからランダム5
泥沼に浮いた船のように、何と淋しい私達の長屋
林芙美子 / 新版 放浪記
同じカテゴリの表現一覧
地上・陸地 の表現の一覧
寂しい・喪失感 の表現の一覧
風景表現 大カテゴリ