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(ジャングルをさまよう日本兵のが感じた死の予感)比島の熱帯の風物は私の感覚を快く揺った。マニラ城外の柔らかい芝の感覚、スコールに洗われた 火焔かえん じゅ の、眼が覚めるような朱の 梢、原色の朝焼と夕焼、紫に かげる火山、 白浪しらなみ をめぐらした 珊瑚礁、水際に蔭を含む叢等々、すべて私の心を 恍惚 に近い歓喜の状態においた。こうして自然の中で絶えず増大して行く快感は、私の死が近づいた確実なしるしであると思われた。
大岡 昇平「野火(新潮文庫)」に収録 ページ位置:6% 作品を確認(amazon)
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余命宣告・死の覚悟
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前後の文章を含んだ引用
......。好む時にまた来る可能性が、意識下に仮定されているためであろうか。してみれば我々の所謂生命感とは、今行うところを無限に繰り返し得る予感にあるのではなかろうか。 比島の熱帯の風物は私の感覚を快く揺った。マニラ城外の柔らかい芝の感覚、スコールに洗われた火焔樹の、眼が覚めるような朱の梢、原色の朝焼と夕焼、紫に翳る火山、白浪をめぐらした珊瑚礁、水際に蔭を含む叢等々、すべて私の心を恍惚に近い歓喜の状態においた。こうして自然の中で絶えず増大して行く快感は、私の死が近づいた確実なしるしであると思われた。 私は死の前にこうして生の氾濫を見せてくれた偶然に感謝した。これまでの私の半生に少しも満足してはいなかったが、実は私は運命に恵まれていたのではなかったか、という......
単語の意味
恍惚(こうこつ)
歓喜(かんき)
風物(ふうぶつ)
紫(むらさき)
快感(かいかん)
恍惚・・・うっとりした状態。放心状態のような気持ちで心を奪われたさま。
歓喜・・・大喜び。心の底から喜ぶこと。
風物・・・1.その土地の春夏秋冬を特徴付ける物。土地や季節に特有の物。
2.目に見える、自然の中にある物。風景。
・・・1.赤と青を混ぜてできる色。古来、高位の象徴とされた。
2.ムラサキ科の多年草。夏、白い小花が咲く。根からとれる染料は紫色(むらさきいろ)。
3.醤油(しょうゆ)の異称。
快感・・・快(こころよ)い感じ。満ち足りた感じ。いい気持ち。
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