このうち全部が陣内の手造りであることに気がついた。 天井も柱も 窓枠 も、材質寸法すべてバラバラなものを、つなぎ合せ、くくりつけて、何とか家の形につくりあげていた。ガラスも、一枚入るべきところに、明らかに厚みのちがう二枚が、裏表から、テープで支えあって入っていたし、ゆるんでブクブクの畳も、捨てたものを一枚、二枚と拾い集めてきたものとしか思えなかった。 家だけでなく、 鍋釜 から茶碗までみな拾ったもののようであった。
向田邦子 / 酸っぱい家族「思い出トランプ(新潮文庫)」に収録 ページ位置:63% 作品を確認(amazon)
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粗末な建物
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......のを片付けはじめる。片付けるといっても、押しつけ積み上げるだけだが、そうでもしないと、坐るところもなかった。 細君のいれたぬるくて薄い茶を飲みながら、九鬼本は、このうち全部が陣内の手造りであることに気がついた。 天井も柱も窓枠も、材質寸法すべてバラバラなものを、つなぎ合せ、くくりつけて、何とか家の形につくりあげていた。ガラスも、一枚入るべきところに、明らかに厚みのちがう二枚が、裏表から、テープで支えあって入っていたし、ゆるんでブクブクの畳も、捨てたものを一枚、二枚と拾い集めてきたものとしか思えなかった。 家だけでなく、鍋釜から茶碗までみな拾ったもののようであった。 復興の兆しはみせていたが、まだ東京には焼跡も多かったから、陣内写真館のような住まいはそう珍しいとはいえなかったが、近い親戚に焼け出されのない九鬼本には、驚くこ......
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家といってもそれは町はずれの川ばたにあるこわれた水車小屋で
宮沢賢治 / セロ弾きのゴーシュ
押しつぶされたような家々の塊
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
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その隣は細長い画廊で、そこだけ空気が跡切れたように人影がない。
小川洋子 / 揚羽蝶が壊れる時「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
梶井基次郎 / 路上
普門寺は日だまりに転び寝したような閑寂さの中に古りさびていた。
石川 達三 / 日蔭の村 amazon
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