悪寒と高熱が交互にやってきた。部屋はそのたびに広がったり縮んだりした。毛布や下着が汗でぐっしょりと濡れ、それが冷えるとしめあげるような寒さにかわった。

帰り道はもう熱っぽくて、街灯の明かりがにじんで見えた

熱のために目が幾らかくぼんでいる。

額にのせた濡布も、瞬時にして、湯に入れたようにあつくなってしまう

信行は熱があるらしく、眼の中がとろんとして、話を聞いているさえ苦しい様子だった。

彼は少しずつ日頃の自分を取りもどして行った。

（自閉症専門のカウンセラー）こういう仕事にひどく疲れるときもある。 　患者を本当に助けたかったら、患者にシンクロしたり、共鳴したりしてはいけない。でも強烈にただ、同調を求めてくる患者に波長を合わせないようにするのは苦しい。腹ぺこのときに目の前にごちそうがあっても気にしないようにする、それと同じくらい難しい。 　向こうは命がけでシンクロだけを望んでいるのだから。エネルギーのすべてをその一時しのぎに注いでくるのだ。 　だから 喩えて言うと、プロのウエイターになったように意識を保つ。腹がへっていてもウエイターが食べ物を運びながらむらむらしていては仕方がない。そんなふうにそらす。 　自分が何をしたいのかを忘れないようにする。治したいんだろう？　治ってもらいたいんだろう？　その基本に常に意識を合わせる。適当にでも何でも、合わせる。とりこまれないようにする。 　自分が手伝おうとしているもののほうに協力体制がない、そのことに時々、ものすごーく疲れる。

杉花粉に目と鼻をやられる

（患者は）自分の小便や糞も始末できぬほど苦しんでいました。

ついにリミッターの針が振りきれ、花粉症を発症した瞬間だった。