皿の上のいかにも健康的に膨れあがったオムレツに手を着けた。ほどよく焼き色がついていて、二つ折りにされたその合わせ目からは、泡立った卵がほとんど敗北感を抱かせるほど傲岸に溢れ出している。海に向かって迫り来る溶岩のような趣だった。
平野啓一郎「ある男」に収録 ページ位置:41% 作品を確認(amazon)
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オムレツ
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前後の文章を含んだ引用
......は、美涼の顔を見つめた。今こうして、彼女と過ごしている時間こそ、どれほど重要かしれないと、勢い口にしそうになったが、口説き文句のようなその言葉を慎んだ。 彼は、皿の上のいかにも健康的に膨れあがったオムレツに手を着けた。ほどよく焼き色がついていて、二つ折りにされたその合わせ目からは、泡立った卵がほとんど敗北感を抱かせるほど傲岸に溢れ出している。海に向かって迫り来る溶岩のような趣だった。「……とにかく、色々ですよ。もっと、真面目に悩んだり、傷ついたりするに値するようなことが山ほどあるんです。もちろん、楽しいこと、嬉しいことも。……僕は、コリアン......
単語の意味
趣(おもむき)
傲岸(ごうがん)
趣・・・しっとりと落ち着いて、心惹かれる特徴や雰囲気。そのものがもっている、自然とかもし出される(いい)雰囲気。ずいぶん昔のものなのに、手入れがされているさま。風情(ふぜい)。
傲岸・・・自分は偉い人間だと思い、威張っていること。また、そのさま。
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オムレツの味、おいしさを伝える表現・描写(卵のカテゴリ)の一覧 ランダム5
中身がやわらかいひだひだで舌ざわりがよかった
石井 好子「巴里の空の下オムレツのにおいは流れる (河出文庫)」に収録 amazon
社長は、「オムレツは中が柔らかくふっくらと、表面はこげめのつかぬクリーム色にまとめることが最高」といわれた
石井 好子「東京の空の下オムレツのにおいは流れる (河出文庫)」に収録 amazon
オムレツだって、外側に少し焼目がついていようとも、中は半熟、かき玉のふわふわである。
石井 好子「東京の空の下オムレツのにおいは流れる (河出文庫)」に収録 amazon
ふわふわとまるで雲をつかむような口ざわり。それでいてデカイ。
檀一雄 / 美味放浪記 amazon
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「卵」カテゴリからランダム5
みるからにやわらかくふっくらと出来ていて、たべたらやはりおいしかった。
石井 好子「東京の空の下オムレツのにおいは流れる (河出文庫)」に収録 amazon
音もさせないで玉子をのみこむように食べた。
林芙美子 / 新版 放浪記
トリや車エビや、みつば、ぎんなんなどのたねが、あまりごろごろ入りすぎているのは、かえって茶わんむし本来の味を損う
石井 好子「巴里の空の下オムレツのにおいは流れる (河出文庫)」に収録 amazon
これ以上、泡立てようがないというほど膨れあがったオムレツ
平野啓一郎「ある男」に収録 amazon
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