赤い太鼓腹を巾 広く浮かばしている汽船や、積荷最中らしく海の中から片袖 をグイと引張られてでもいるように、思いッ切り片側に傾いているのや、黄色い、太い煙突、大きな鈴のようなヴイ、南京虫 のように船と船の間をせわしく縫っているランチ、寒々とざわめいている油煙やパン屑 や腐った果物の浮いている何か特別な織物のような波……。風の工合で煙が波とすれずれになびいて、ムッとする石炭の匂いを送った。ウインチのガラガラという音が、時々波を伝って直接 に響いてきた。
小林多喜二 / 蟹工船 ページ位置:0% 作品を確認(青空文庫)
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漁港・波止場
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前後の文章を含んだ引用
......。――漁夫は指元まで吸いつくした煙草 を唾 と一緒に捨てた。巻煙草はおどけたように、色々にひっくりかえって、高い船腹 をすれずれに落ちて行った。彼は身体 一杯酒臭かった。 赤い太鼓腹を巾 広く浮かばしている汽船や、積荷最中らしく海の中から片袖 をグイと引張られてでもいるように、思いッ切り片側に傾いているのや、黄色い、太い煙突、大きな鈴のようなヴイ、南京虫 のように船と船の間をせわしく縫っているランチ、寒々とざわめいている油煙やパン屑 や腐った果物の浮いている何か特別な織物のような波……。風の工合で煙が波とすれずれになびいて、ムッとする石炭の匂いを送った。ウインチのガラガラという音が、時々波を伝って直接 に響いてきた。 この蟹工船博光丸のすぐ手前に、ペンキの剥 げた帆船が、へさきの牛の鼻穴のようなところから、錨 の鎖を下していた、甲板を、マドロス・パイプをくわえた外人が二人同じ......
単語の意味
汽船(きせん)
靡く(なびく)
太鼓腹(たいこばら)
汽船・・・蒸気の力を利用して動く船。蒸気船。
靡く・・・1.草や藻、布などの長くて軟らかいものが、水や風の流に従って横に動く。
2.権力者の意思や命令に従う。また、女性が男性の言うことを受け入れる。
2.権力者の意思や命令に従う。また、女性が男性の言うことを受け入れる。
太鼓腹・・・太鼓の胴(どう)のように、ふくらんでいる腹。太鼓っ腹(たいこっぱら)。
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船・ボートの表現・描写・類語(乗り物のカテゴリ)の一覧 ランダム5
錨が、錨穴のところに大きな黒い鉄いろの蟹のようにとりつく
三島 由紀夫 / 午後の曳航 amazon
油のような粘りを持った大きな波浪がゆったりと襲ってきては、船を山から谷へ谷から山へと運ぶ
井上 靖 / 天平の甍 amazon
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漁港・波止場の表現・描写・類語(店・施設のカテゴリ)の一覧 ランダム5
マルセイユの古い港、そこはコの字型になっていて、大小さまざまのレストランが軒をつらねている。
石井 好子「東京の空の下オムレツのにおいは流れる (河出文庫)」に収録 amazon
港といっても黒い小石をつみかさねた舟着場が一つあるだけで、浜辺には頼りなげな小舟が二 隻、引き揚げられている。
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
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(ガスタンク)頭の上に、びっくりするほど巨大なガスタンクが青白い照明を浴びて、気球のように浮かんでいる
阿部 昭 / 阿部昭集〈第4巻〉父と子の夜 無縁の生活 ほか amazon
(城跡)城山の石畳を歩いていた。ここに城閣はない。苔蒸した石垣だけが残っている。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー (文春文庫)」に収録 amazon
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通り過ぎる車はどれもこれも、卵形だったりミニバンの亜流みたいなフォルムでまるで見分けがつかない。
羽田 圭介「ミート・ザ・ビート (文春文庫)」に収録 amazon
ライトバンがロデオの馬のようにお尻を跳ね上げながら走る
干刈 あがた / ウホッホ探険隊 amazon
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