（暗い部屋でテレビを見る）映像の光に合わせて、彼女の横顔は様々な色に変化していた。

テレビの連続ドラマを何回分かまとめて見たようなだるい印象を残す映画

（終戦間もなくは）われわれの娯楽といえば、芝居と映画だけの時代だったのである。食べものすら充分でなかった。

（活動写真）最初「実写」だった。宮城、松島、江ノ島、京都……が、ガタピシャガタピシャと写って行った。時々切れた。急に写真が二、三枚ダブって、目まいでもしたように入り乱れたかと思うと、瞬間消えて、パッと白い幕になった。 　それから西洋物と日本物をやった。どれも写真はキズが入っていて、ひどく「雨が降った」それに所々切れているのを接合させたらしく、人の動きがギクシャクした。

先ごろ見た映画〔愛の狩人〕は、アメリカ映画の新しいエネルギーが生み出した一種の快作というべきであった。

カーテンを引いた薄暗い部屋。冷たい輝きを放つメニュー画面。

目が覚めるような（綺麗な）Retinaディスプレイ

気がつくと、テレビは走行線だけの赤紫の画面に変わっている。織り目の 粗い、 紬つむぎ 地じ のような色合いである。

まるで舐めたくなるようなディスプレイ

すりガラス越しにテレビの画像が揺れている

ＴＶはまるで友達のように思えるけれど、実は壁と大差ない、なぜならもし強盗が入ってきて部屋の主が殺されても、ＴＶは何事もなく映り続けるから

広くもない四角な板を狭苦しく四角に仕切って、目が眩（くら）むほどごたごたと黒白（こくびゃく）の石をならべる。

二人の子供に一匹の犬が川上の方へ歩いて行く。犬は戻って、ちょっとその新聞紙を嗅（か）いで見、また子供のあとへついて行った。

（難解で退屈な映画）「音楽と一緒だと思えばいいんだよ。オーケストラの演奏を聴く時に意味なんて考えないでしょ。あれと一緒だよ」

それぞれに施された刺繡の手触りが 蘇ってくる。あるものは袖口の内側に遠慮がちに隠れつつ、守護天使のように私を見守り、またあるものは胸元の一番目立つ場所に陣取り、邪悪なものを追い払う護符となっていた。

ストーブの炎に照らされたまち子の 肌 が、青く粘りつくように動いていた。

雨水にさらされてぐちゃぐちゃ

ごわごわに乾いたジーパン

冷蔵庫を開ける。冷えた麦茶のきれいな色に、自分の顔が映る。

時折り思い出したように冷蔵庫が低い音を立てるだけ。