それぞれに施された刺繡の手触りが 蘇ってくる。あるものは袖口の内側に遠慮がちに隠れつつ、守護天使のように私を見守り、またあるものは胸元の一番目立つ場所に陣取り、邪悪なものを追い払う護符となっていた。
小川 洋子 / 亡き王女のための刺繡「口笛の上手な白雪姫」に収録 ページ位置:78% 作品を確認(amazon)
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ししゅう
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前後の文章を含んだ引用
......プ形コート、カシミア製ボレロ、総レースのフレアスカート、麻のサマードレス……。どれも皆、色や形から着心地、それを身につけて出掛けた場所まで思い出せる。と同時に、それぞれに施された刺繡の手触りが蘇ってくる。あるものは袖口の内側に遠慮がちに隠れつつ、守護天使のように私を見守り、またあるものは胸元の一番目立つ場所に陣取り、邪悪なものを追い払う護符となっていた。 あんなに大事にしていたのに、どうして私の体はあれらが着られなくなるほどに大きくなってしまったのだろう。体など小さいままで構わないから、ずっとあの洋服たちを着て......
単語の意味
手触り(てざわり)
胸元・胸許(むなもと)
手触り・・・1.手で触ったときの感じ。手に受ける感触。
2.物から直接受ける感じ。印象。
2.物から直接受ける感じ。印象。
胸元・胸許・・・胸の元・許(=付け根)。胸のあたり。胸先・胸前(むなさき)。
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それぞれに施された刺繡の手触りが 蘇ってくる。あるものは袖口の内側に遠慮がちに隠れつつ、守護天使のように私を見守り、またあるものは胸元の一番目立つ場所に陣取り、邪悪なものを追い払う護符となっていた。
小川 洋子 / 亡き王女のための刺繡「口笛の上手な白雪姫」に収録 amazon
(イニシャルのししゅうがほどける)ふと、爪の先が糸に引っ掛かった。ほんの 微かな一瞬だった。はっと思う間もなく、するすると糸が解けていった。あらかじめ定められた決まりに従うように、りこさんの手つきをなぞるように、アルファベットはごく自然に一本の糸に戻っていった。《…略…》小さな針の穴の連なりだけを残し、私の名前は宙に溶けて消えてしまった。
小川 洋子 / 亡き王女のための刺繡「口笛の上手な白雪姫」に収録 amazon
ハンカチのイニシャルは見事だった。安っぽい一枚の布切れが、片隅にたった二つ、文字を刺繡されただけで優美な服飾品に変身していた。
小川 洋子 / 亡き王女のための刺繡「口笛の上手な白雪姫」に収録 amazon
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ひどい番組しかやっていなかった。いろんな種類のつくりものの反吐を見せられているみたいな気がした。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
(ブラームスのバラードを聴く)その移りゆくはかない陰影と吐息の世界に身を任せる
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
乱れた髪に無精髭、分厚い黒縁メガネに薄汚れた白衣を着た山崎の風貌は、どこから見てもオタクで、事実、三度の飯より実験が好きという性格だ。それが災いしてか、四十間近にしていまだ独身という男である。
池井戸潤「下町ロケット (小学館文庫)」に収録 amazon
お友だちに話すように紙の上に書いたのが、〈巴里の空の下オムレツのにおいは流れる〉であった。
石井 好子「東京の空の下オムレツのにおいは流れる (河出文庫)」に収録 amazon
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