丘を少し上ったところにある隠れ家のようなコテージ

ウサギ小屋のような家

十五坪弱の敷地に無理やり建てたスリムな三階建て

白い化粧煉瓦を張った長い塀が、いかにも澄んだ冬の空気を映していた。

百坪ほどの敷地に建てられた、これといって特色のない家

崩れかけた下宿

保存的価値のある建築

十万石の城下町でもあった桑名の情趣が、ここへ泊ると肌にせまってくるようなおもいがする

家は武蔵野の打ち続く平地に盛り上った一つの瘤（こぶ）のような高まりの上に礎石を載せていた。天井の高い二階建ての洋館は、辺りの日本建築を見下すように見える。

見覚えのある屋根、見覚えのある倉庫、かつて自分の住居であった海辺の朽ちた昔の家が、五年前の平和な姿のままだ。何もかも懐しい姿である。少女の頃に吸った空気、泳いだ海、恋をした山の寺、何もかも、逆もどりしているような気がしてならない。