（身動きもできないほど衰弱して）吉田はほとんど身動きもできない姿勢で身体を鯱硬張（しゃちこば）らせたままかろうじて胸へ呼吸を送っていた。

いつ倒れても不思議でないほど衰弱する

ひからびて黒ずんだ枯れ木のような肉体

（冬のハエは）読んでいる本へ纒（まつ）わりついて、私のはぐる頁のためにいつも身体を挾み込まれた。それほど彼らは逃げ足が遅い。逃げ足が遅いだけならまだしも、わずかな紙の重みの下で、あたかも梁（はり）に押えられたように、仰向（あおむ）けになったりして藻掻（もが）かなければならないのだった。

一晩で十歳を取ったみたいに衰弱する

ウイルスの特徴は宿主の細胞を借りて増殖することにある

久しい間病気でいられたのに、厨子王の守本尊を借りて拝むと、すぐに拭うように本復せられた。

その詳細を思い出すことができない。ものごとの前後が入り乱れている。無理に思い出そうとすると、身体全体を強くねじられるような感覚があった。まるで上半身と下半身がそれぞれ逆の方向に曲げられているみたいだ。頭の芯が鈍く疼（うず）き、まわりの空気が急速に希薄になっていった。水の中にいる時のように音がくぐもった。今にもあの「発作」が襲ってきそうだ。

疲労のはて、欲も得もなく眠りこけた。

裸あら わな足が、 白鳳はくほう の天女の足のようにむくんで、水にさらされていた。