月はまるで青い氷のなかの刃のように澄み出ていた。

気の毒なお月さまが、東の空の隅っこに、使い古しの腎臓みたいにぽこっと浮かんでいるような時間に。

月が、うらうらと靡（なび）いた霧の中に、まるで爪の痕かと思うほど、かすかに白く浮んでいる

しんしんと光が降る満月の夜

月が青い氷のなかの刃のように澄み出る

視線のまっすぐ先の夜空に唐突に、巨大な彗星があった。長くたなびく尾はエメラルドグリーンに輝いていて、その先端は月よりも明るかった。目を凝らすと、細かな塵のような粒がその周囲にきらきらと舞っていた。

西の空に土手のような雲

層となって重なり合う雲の向こうのそのまた向こうの雲の奥に、本物の太陽が見え隠れしている。

見上げると気の遠くなるほどの高く淡青の冬の空がある

窓を開けると湿った重たい風がまつわりついてきて、かえって汗が出た。