世知辛い・生きにくい世の中の表現・描写・類語

世間の風は冷たい

荒磯（あらいそ）に波また波が千変万化して追いかぶさって来ては激しく打ちくだけて、まっ白な飛沫（ひまつ）を空高く突き上げるように、これといって取り留めのない執着や、憤りや、悲しみや、恨みやが蛛手（くもで）によれ合って、それが自分の周囲の人たちと結び付いて、わけもなく葉子の心をかきむしっていた

晴ればれとした往来へ出ても、自分に萎（しな）びた古手拭のような匂いが沁（し）みているような気がしてならなくなった。

どんづまりの世界は、光明と紙一重で、ほんとに朗か

もう疲れきった私達は、何もかもがメンドくさくなってしまっている。

生きるは辛し。

ああ生きる事がこんなにむずかしいものならば、いっそ乞食にでもなって、いろんな土地土地を流浪して歩いたら面白いだろうと思う。

酒でも呑まなければあんまり世間は馬鹿らしくて、まともな顔をしては通れない。

チュウインガムを噛むより味気ない世の中、何もかもが吸殻のようになってしまった。

私はがまん強く笑って来ました。

街を吹く五月のすがすがしい風は、秋のように身にしみるなり。

（河の）塵芥（じんかい）に混って鳩の死んだのがまるで雲をちぎったように流れていっていた。《…略…》私はフッと鳩のように死ぬる事を考えているのだ。《…略…》静かに流れて行く鳩の死んだのを見ていると、幸福だとか、不幸だとか、もう、あんなになってしまえば空（くう）の空（くう）だ。何もなくなってしまうのだと思った。

どのひとも、夜も日もなく働かねば食えない世の中なり。

卑屈になって、何の生甲斐（いきがい）もない自分の身の置き場が、妙にふわふわとして浮きあがってゆく。胴体を荒繩でくくりあげて、空高く起重機で吊りさがりたいような疲れを感じる。

午前中からたて続けに三本の映画を観てしまった。エンディングの途中で耐え切れなくなって、次のＤＶＤかビデオに交換する。それが終わるとまた次。いつもそんな調子だ。何本観たって結局は同じ。いずれ色鮮やかな夢から覚めれば、そこは狭くて薄暗いおなじみの牢獄のなかというわけだ。けれどもこの閉ざされた場所では、夢を見ることのほかに、つまり映画を観ることのほかに、いったい何ができるだろう？

「みんな、この世界の評価が高すぎるんですよ。願望ですよ、それって。だから、人が不幸になっても、本人が悪いって責めるし。自分の人生にも全然満足できないし。」