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私はぼんやりと、山へはいって行く汽車にゆられていた。
林芙美子 / 新版 放浪記 ページ位置:52% 作品を確認(青空文庫)
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電車・汽車
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......いま汽車に乗って、当もなくうらぶれた旅をしている。私は妙に旅愁を感じるとまぶたが熱くふくらがって来た。便所臭い三等車の隅ッこに、銀杏返いちょうがえしのびんをくっつけるようにして、私はぼんやりと、山へはいって行く汽車にゆられていた。
古里のうまやは遠く去った 花がみんなひらいた月夜 港まで走りつづけた私であった おぼろな月の光りと赤い放浪記よ 首にぐるぐる白い首巻をまいて 汽船を恋した私だった。
 一切合切が、......
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