彼は衛兵所で中隊名と行先とを書き入れて衛門を一歩またいだが見る見るゴムのような或いは雲のようなものが衛門のうちから自分の後を追うてくるのを感じた。それは 紐 のような、また手のような形をしているかのようだ。それはいつも彼が衛門を一歩外へでるたびに後からついてくるのだが、それはどこまでも部隊のなかからくりだされ、のびてくる。彼は部隊から紐をつけてだされた人間だから、再びたぐりよせられて、そこに引きもどされなければならない人間だった。
野間 宏「真空地帯(新潮文庫)」に収録 作品を確認(amazon)
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拘束される
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少年は素裸にされて、手足を押さえつけられ、小人の国のガリバーになった。
島田 雅彦 / 聖アカヒト伝「ドンナ・アンナ (新潮文庫)」に収録 amazon
男が司祭の両手をうしろに縛った。縄は体を少しでも動かすと、思わずくいしばった歯から声が洩れるほど手首に強く食いこんだ。
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
ガムテープで身体が椅子に縛りつけられている。その安っぽさがよけいに残酷に見えた。任務に失敗した間諜が、机に縛りつけられて、拷問を待つ姿を想像させた。
伊坂 幸太郎「陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)」に収録 amazon
登った木から降りられなくなった猫みたいに、どこへも行けず
中島 京子「小さいおうち (文春文庫)」に収録 amazon
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コブラのようにのびあがった繁ばあちゃん
三浦 しをん「神去なあなあ日常 (徳間文庫)」に収録 amazon
息を引き取る病人のように、がくがくと大きく開いた口が痙攣する
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
(小さい目の)トミ子は涙をこぼした。小さなドブから水が 溢れるように、ジワジワビショビショと涙が溢れた。
向田邦子 / だらだら坂「思い出トランプ(新潮文庫)」に収録 amazon
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