（立ち止まって話していると）南に向かう人々の話し声や体臭や着ているものの色合いが、大きな濁流のように邦彦の傍を横切っていた。
宮本 輝「道頓堀川（新潮文庫）」に収録 ページ位置：39% 作品を確認（amazon）
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人通り・人の往来
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......とがおまんねや。日本橋に移ってから、ぱったりごぶさたしてしもて……」 男は何度も邦彦を誘った。邦彦は返答に窮しながら、男の眉間にある大きな薄黒いイボを見ていた。南に向かう人々の話し声や体臭や着ているものの色合いが、大きな濁流のように邦彦の傍を横切っていた。「店は夕方からやさかい、まだ板前は来てまへんけど、何かうまいもんを作ってごちそうしまんがな」「いや、きょうは持ち合わせがありませんから」「金なんかいりまへんがな......
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