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二度も三度も、彼はうしろを振り顧りながら走った。往来の人の声が、みんな、鼠小僧、鼠小僧と、指さすように、思われた。 わざと、道頓堀の人混みへはいって、細い路地から千日原まで抜けて来た。《…略…》ひとりとして自分へ向って光って来る眼はなかった。
吉川英治 / 治郎吉格子 ページ位置:22% 作品を確認(青空文庫)
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いたたまれない・逃げ出したい
逃げる・逃走する・避難する
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前後の文章を含んだ引用
......洗い水にゃ、及ばねえよ」 抛るように、髪結銭をおくと、治郎吉は、われながら、慌てすぎると思いながら、さっと、土間障子をはやく開けて、往来へ、出てしまった。 二度も三度も、彼はうしろを振り顧りながら走った。往来の人の声が、みんな、鼠小僧、鼠小僧と、指さすように、思われた。 わざと、道頓堀の人混みへはいって、細い路地から千日原まで抜けて来た。そして、はじめて、豆絞 りをつかんで、腋 の下 の汗を拭きながら、 「ああ、びっくりした」 と、呟いた。 歯磨き売りや、古着屋や、野天にいろいろな露店が出ていた。治郎吉の眼は、まだ落着かずに、そんなものにまで、気をくばりながら、草むらへ、手拭を敷いて、両膝を抱えこんだ。 「はてな……」 来たら――と脇差の鯉口 を切って、逃げる先の先まで、微細な工夫をしていたが、こう見まわしたところでは、ひとりとして自分へ向って光って来る眼はなかった。岡ッ引くさい者も、捕手くさい人間も通りはしなかった。 「こいつあ、大笑いだ」 治郎吉は、自分へ嗤 った。 「ふた月も、稼ぎを忘れて、燗徳利 みてえに、湯にばかりつかって......
単語の意味
往来(おうらい)
往来・・・1.行き来(いきき)。行ったり来たりすること。
2.道路。通り。
2.道路。通り。
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何だか気がせいて一刻も早く往来へ出たくて堪 りません。
夏目漱石 / 吾輩は猫である
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井上留吉と私は、三人を突飛ばすように廊下へ飛出した。 二人とも和服であったが、こういうとき、あずけてある履物のことや、勘定のことなどに気をつかっては、すべてに遅れをとってしまう。 井上は、ものもいわず、まっしぐらに足袋はだしで廊下から玄関、門の外へ駆け去る。私を見捨てたようにおもえる
池波 正太郎「食卓の情景 (新潮文庫)」に収録 amazon
鼯(むささび)のごとく逃げた。
池波 正太郎 / 剣客商売 amazon
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からくりの糸が驚くほどの明瞭さで露(あら)われる
谷崎 潤一郎 / 痴人の愛 amazon
確かにいたものが突然溶けてしまうかどうかしたような気味の悪い不思議さに
有島武郎 / 或る女
二人の看護婦が這入 って来て、私の両手を左右から、罪人か何ぞのようにシッカリと捉えていた。
夢野久作 / ドグラ・マグラ
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くすぐったいような軽やかな気持ち
雫井 脩介「火の粉 (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
心の底にふるえている男としての恥かしさ
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