西空に懸った細い月は、 紐 で 繋がれたように、太陽の後を追って沈んで行った。
昇平, 大岡「野火(のび) (新潮文庫)」に収録 ページ位置:16% 作品を確認(amazon)
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月
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前後の文章を含んだ引用
......かけて番をしていた。火が彼の顔を明るく照し出すほど、いつかあたりは暗くなっていた。俯向いた彼の顔には、無数の皺が切り疵のように走っていた。六 夜 夜は暗かった。西空に懸った細い月は、紐で繋がれたように、太陽の後を追って沈んで行った。めいめい雨衣をかぶり、雑嚢を枕に横になった。強い光を放つ大きな蛍が、谷間を貫く小さい流れに沿って飛んで来て、或いは地上二米の高さを、火箭のように早く真直に飛び、......
単語の意味
西空(にしぞら)
西空・・・西の空。日が落ちる方角の空。
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月の表現・描写・類語(空・中空のカテゴリ)の一覧 ランダム5
頂上から空を見上げると、月は驚くほど間近に、そして荒々しく見えた。それは激しい歳月に肌を 蝕まれた粗暴な岩球だった。その表面に浮かんだ様々なかたちの不吉な影は、生命の営みの温もりにむけて触手をのばす癌の盲目の細胞だった。月の光はそこにあるあらゆる音をゆがめ、意味を洗い流し、心のゆくえを惑わせていた。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
いつもながらの冬の月だ。冷ややかで青白く、太古から引き継がれた謎と暗示に満ちている。それは死者の目のようにまばたきひとつせず、黙して空に浮かんでいる。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
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