居間から台所に行き、納戸と浴室と洗面所と地下室を調べ、二階の部屋のドアを開けてみた。誰もいなかった。沈黙だけが油のように部屋の隅々にしみこんでいた。部屋の広さによって沈黙の響きかたが少しずつ違っているだけだった。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 ページ位置:86% 作品を確認(amazon)
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室内(空間)が静か
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......りかえった。まるで生あるものの全てが死に絶えてしまったあとのような沈黙だった。僕は本を置いて、これといった理由もなく、家の中を順番にひととおり歩きまわってみた。居間から台所に行き、納戸と浴室と洗面所と地下室を調べ、二階の部屋のドアを開けてみた。誰もいなかった。沈黙だけが油のように部屋の隅々にしみこんでいた。部屋の広さによって沈黙の響きかたが少しずつ違っているだけだった。 僕は一人ぼっちで、生まれてこのかたこれほど一人ぼっちになったことはなかったような気がした。この二日ばかりではじめて強烈に煙草が吸いたくなったが、もちろん煙草は......
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室内(空間)が静かの表現・描写・類語(音の響きのカテゴリ)の一覧 ランダム5
しんとした気配はなんのバリアもない僕に容易にまとわりつき、浸透してゆく。
綿矢 りさ / 自然に、とてもスムーズに「しょうがの味は熱い (文春文庫)」に収録 amazon
朝の誰もいない広々とした食堂の中は恐ろしく深閑としていて
林芙美子 / 新版 放浪記
空虚のような静寂が拡がった。
宮本百合子 / 伸子
氷の詰まった部屋のように冷ややかに静まり返る
高橋 三千綱 / 涙 amazon
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「音の響き」カテゴリからランダム5
音が耳の中に入り込んで苔のように張りつく
尾辻 克彦 / 父が消えた amazon
昼間のラジオ番組は主婦と高齢者を主なリスナーと設定して作られている。出演している人々は気の抜けた冗談を口にし、意味のない馬鹿笑いをし、月並みで愚かしい意見を述べ、耳を覆いたくなる音楽をかけた。そして誰も欲しがらないような商品を声高に宣伝した。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
ざわめきが一瞬氷の世界に閉ざされたように凍りついて静まり返る
高橋 三千綱 / 涙 amazon
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