(千切り大根)農家の内外にはいつも干し藁や干し豆やもみや糠の匂いが漂っているが、とくに千切り大根を取り込んで来たときはあたり一帯甘くやわらかい陽の匂いが立ち、ここが桑島村であるのを綾子にしっかり実感させるのであった。
宮尾 登美子 / 朱夏 作品を確認(amazon)
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肥り肉の女が、よく汗ばんだ襟首を押しはだける癖があるように、大根は身体中の肉がはちきれるほど肥えて来ると、息苦しそうに土のなかに爪立をして、むっちりした肩のあたりを一、二寸ばかり畦土の上へもち上げて来る。そして初冬の冷い空気がひえびえと膚にさわるのを、いかにも気持よさそうに娯しんでいるようだ。
薄田 泣菫 / 艸木虫魚 amazon
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