空は深い海のように碧く、ひろびろと地平のかなたまで遠くはるかに、おなじみどりに澄んでいる。

山の中腹に立つ彼のアパートからは闇の中に雑然とばらまかれた人々の営みをくっきりと見下ろすことができた。時折鼠は両手を腰にやり、まるでダウンヒルのコースに立ったゴルファーのように、何時間も意識を集中してそんな風景を眺めることがあった。《…略…》そして暗い海、海と空の闇は区切りようもないばかりに溶け合い、その闇の中に灯台のオレンジ色の光が浮かび、そして消えた。そしてはっきりと区切られたそれらの断層の間を暗いフェアウェイが一筋貫いている。

土手の向こうで、細長い海が水色の空と混じり合っていた。貨物船がいくつか浮かんでいた。

水平線から雲の峯が山羊を積みかさねたように、宙天に架け出され

視界を遮る物があまりなく遠くのほうまで見渡せる。

やや湿地がかった平野で、田圃（たんぼ）と多少の高低のある沢地がだるく入り混っていた。

家は武蔵野の打ち続く平地に盛り上った一つの瘤（こぶ）のような高まりの上に礎石を載せていた。天井の高い二階建ての洋館は、辺りの日本建築を見下すように見える。

悲しいくらい周囲は眼を遮（さえぎ）るものもない。《…略…》点を打ったように枝葉を刈り込まれた松並木が見えるだけであった。

フランスの田舎はなだらかな平野で心がなごむ。

何もないことが逆に素晴らしいと感じる広大な大地

どこまでも撫（な）で肩（がた）の柔かい線

緑の濃淡と川面のきらめきが折り重なり、欠けるところのない調和を見せていた。

峡谷の底を流れる川が一条の光る糸となって蛇行する

郊外の平凡な田園

国立駅前はロータリーから放射状に延びる三本の通りが有名だが