朝日が眠りから醒めたばかりの目にまぶしい

朝日の光が靄のように街路に溢れていた。

室内の人工の灯りが徐々に流れ込んで、部屋を浸す暁の光線と中和すると、妙に精の抜けた白茶けた超現実の世界に器物や光景を彩り、人々は影を失った鉛の片（きれ）のようにひらぺたく見える。

引きしぼられた巨大な強弓が、はるかな宇宙の縁から、巨大な黄金の矢を放つ

裸で朝の光の中に立った。まるで充電しているみたいに。

（傾いた陽）冬陽は郵便受のなかへまで射しこむ。

淡青（うすあお）く晴れ渡った寒空には、姿を没した夕陽が大きな、車の幅のような茜色の後光を大空いっぱいに美しく反射している。

人通りのない朱雀（すざく）の大路（おおじ）を、二人は静かに馬を進めて行った。兄も黙っていれば、弟も口をきかない。しんとした夜は、ただ馬蹄（ばてい）の響きにこだまをかえして、二人の上の空には涼しい天の川がかかっている。

（瀬は）尻（し）っ尾（ぽ）のように細くなって下流の闇のなかへ消えてゆく

西空の雲が灰色とオレンジ色のまだら模様に染まっている。まだ明るさを残す上空とは対照的に、闇色に染まりつつある地上の街並み

既に高く昇った日に照されて、 岬 は 蔭 を失っていた。

靄のような弱い光で肌着が汚れたように映る

木の葉を洩れた日光の白い片が、その海の小魚のように隆の肩や、枝にかけた手に戯れた

（庭のデッキ・チェアで目を閉じて思い出そうとする）猫の姿を頭に思い浮かべようとしたが、実際に僕が思い浮かべることができるのは、逆光を浴びた写真のようなひどく漠然とした猫の像にすぎなかった。強い太陽の光が瞼をとおり抜けて僕の暗闇を不安定に拡散させていたし、それに僕はどれだけ努力しても猫の姿を正確に思いだすことができなかったのだ。

窓越しに差し込んでくる初夏の日射し