俥、自動車、荷馬車、自転車、それからその間々を縫って人間が四方へ勝手な速さで歩いていた。

群衆が雪崩を打ってひしめく

その周囲附近には弥次馬（やじうま）兼援兵が雲霞（うんか）のごとく付き添うている。

入れこみの店内で、二人とも大声に語り合う。他人が見たら、喧嘩をしているように見えるそうだが、笑い声がきこえるので、 「そうではないらしい」 　と、わかる

驚きの人口密度

入り込んだ町で、昼間でも人通りは少なく、魚の腹綿（はらわた）や鼠の死骸は幾日も位置を動かなかった。両側の家々はなにか荒廃していた。自然力の風化して行くあとが見えた。紅殻（べにがら）が古びてい、荒壁の塀（へい）は崩れ、人びとはそのなかで古手拭のように無気力な生活をしているように思われた。

ぐったりとした患者は鳥のように白く眼をあけて何か呟いた

何か大事なものでもなくしちゃったみたいにげっそりとした後ろ姿

ブランドに頼る凡人

全体からかもしだされる生命力の揺れみたいな鮮やかな光──人間じゃないみたいだった。こんな人見たことない。《…略…》よくよく見れば確かに歳相応のしわとか、少し悪い歯並びとか、ちゃんと人間らしい部分を感じた。それでも彼女は圧倒的だった。もう一回会いたいと思わせた。心の中にあたたかい光が残像みたいにそっと輝いて、これが魅力っていうものなんだわ、と私は感じていた。初めて水っていうものがわかったヘレンみたいに、言葉が生きた姿で目の前に新鮮にはじけた。大げさなんじゃなくて、それほど驚いた出会いだったのだ。

朝の出勤ラッシュの時間帯を過ぎていたせいで、車内は比較的空いている。

食堂はもう長い間使われていないらしく、あらゆるものがきれいに乾燥しきっていた。

デパートは 混み合っていた。人いきれで汗ばむほどだった

ハエのように集まってくる

団子のように固まる