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地上は草のあわいまでも紫の影に満ち、 陽 の熱の名残と、土と、水蒸気とから生れる、甘ずっぱい匂いがあたりに漂っていた。
昇平, 大岡「野火(のび) (新潮文庫)」に収録 ページ位置:14% 作品を確認(amazon)
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夕方
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前後の文章を含んだ引用
......士は何かいいつのろうとしたが、喉を鳴らしただけで草の中へ倒れた。五 紫 日は暮れて来た。空は夕焼して赤い色が天頂を越え、東の方中央山脈の群峰を雑色に染めていた。地上は草のあわいまでも紫の影に満ち、陽の熱の名残と、土と、水蒸気とから生れる、甘ずっぱい匂いがあたりに漂っていた。遥か川向うの丘の上には、芋虫が立ち上ったような巻雲が夥しく並んで、これも真紅に染っていた。 見渡す野には野火はいつか衰え、薄い煙が湯気のように、一面に騰っている......
単語の意味
間(あわい)
土(つち)
紫(むらさき)
・・・あいだ。間隔。
・・・岩石と有機物が混じって細かい粉末状になったもの。有機物は、生物の死骸およびその腐敗物、微生物などから構成されている。砂(有機物が含まれない)とは違い、植物が育ちやすい。
・・・1.赤と青を混ぜてできる色。古来、高位の象徴とされた。
2.ムラサキ科の多年草。夏、白い小花が咲く。根からとれる染料は紫色(むらさきいろ)。
3.醤油(しょうゆ)の異称。
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夕陽が麦畑の上に赤い玉になって落ちて行く。
火野 葦平 / 麦と兵隊「土と兵隊・麦と兵隊 (新潮文庫)」に収録 amazon
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