規則正しく楽しげな寝息

掠れた笛のようなイビキ

潮を噴くようにイビキをかく

深い鼾睡（かんすい）に陥る

グワッ！という大きなイビキ

いつのまにか、眠ってしまっていたらしい。電気が点いたままの部屋で、愛子はいま、自分が時計のどのあたりを浮遊しているのか分からなかった。

そういうやり取りが遠のいてゆき、いつしかうとうと寝ていた。 　波音と、店から聴こえてくる音楽との間に短く、強烈に夢が忍び込んできた。

（昼寝）ぐうぐう大いびきで寝てしまった

さっき 半端 に眠ってしまった私は、眠れずに起きて

（寝落ち）彼はかなり疲れていた。然し習慣から、雑誌を持って寝床へ入った。然しそれは十分しない内に文句の意味が彼から遠のいて行った。半分眠ったようになって、それでも彼はそれへ追いすがろうとし、そして無理に意識をはっきりさすと、字は読みながら、もう意味は勝手な夢になっていた。

簪（かんざし）も櫛（くし）も枕元へ抜いて、「さあ寝んねしましょう。」と云った。暗い部屋の中では、花の匂いだけが強く私達をなやませた。

目が開く。一秒か二秒の間、陣治の表情は妙に定まらず、陣治ではない見知らぬ人のように見えて、十和子を不安にさせる。

外の世界と自分の世界を厳密に隔てるように、掛け布団を首まで引っ張り上げた。

フッと引き入れられるように眠りに陥る

眠りが優しく私を包んだ。 　あざみさんがばたんと戸を閉めて出て行ったのが聞こえた。淋しさを打ち消すような、とてもいい音だった。