降りしきる雨が粘土色の 川面かわも に無数の波紋を落としていた。濃い 藍色 の水がその中で 縞模様を描きつつ 渦巻いている。汚物の群れが橋げたにぶつかってくるくる 廻っていた。

手の平を上に向け、上を見て雨に気付くときの仕草

降り方も平均してきて、どっしり腰をすえて降っている

途切れることなく落ちてくる雨

急に雨が強くなり、道にできた水溜りは波紋を作りながら次々と広がっていく

アスファルトの広い国道は、ぼおっとした夕暮の河のように心細い眺めだった。

鎔鉱炉から流れ出る液体の鉄に見える（ヘッドライトに照らされた雨の）曲がりくねった道路

片側二車線の車道

多摩川の堤防に沿って粗いアスファルトの道が続き

３０メートル先の大通りは、ここから見ると人ごみと車が幾層にも重なって見える

雨に濡れた街の景色が重かった。

時々傘がひっくり帰ってしまうほどの強い風が吹く

色のベタベタにじんでいるような街路

牧草が重たい露に濡れて頭を垂れる

雨は肌に容赦なく当たり、パシッハシッと音を立てて跳ね返る

ハイウェイを右に折れ、山に向かってしばらく進む

バスは突然ひやりとした杉林の中に入った。杉はまるで原生林のように高くそびえたら、日の光をさえぎり、うす暗い影で万物を覆っていた。開いた窓から入ってくる風が急に冷たくなり、その湿気は肌に痛いばかりだった。谷川に沿ってその杉林の中をずいぶん長い時間進み、世界中が永遠に杉林で埋め尽くされてしまったんじゃないかという気分になり始めたあたりでやっと林が終り、我々はまわりを山に囲まれた盆地のようなところに出た。

池の縁を取りまいて若い並木の列がある。町並の家総体が一つの発光体となった今は、それから射出する夜の灯で、これ等の並木は影くろぐろと生ける人の列のようにも見える。並木に浸み剰（あま）った灯の光は池の水にも明るく届いて

舗装された道路は数十メートルごとになだらかに曲がっていて、細い川のようでもあった。

雨あがりのせいか、ぱあっと石油色に道が光っている。