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道具・家具の比喩を使った文章の一覧(258件)
まるで定規を使って空間にピッと線を引いたみたい
村上 春樹 / ノルウェイの森 上 amazon
灰皿の上を荒涼とした枯れ山のようにこんもりとさせる
谷村 志穂 / ハウス amazon
縄が生き物のように揺れながら谷底へ垂れる
伊集院 静 / 三年坂 amazon
手紙を遠い過去をいじるように指先でさわる
大庭 みな子 / がらくた博物館 amazon
板っぺらのようにすり減った下駄の裏
山本 有三 / 波 amazon
色がすすけてしまったデザート・ブーツをひっぱり出してはいた。靴はまるで足もとでかしこまった二匹の仔犬のように見えた。
村上 春樹 / 1973年のピンボール amazon
解剖学の教科書から写生したような精密な浮き彫り
小川 洋子 / 余白の愛 amazon
人間の腕ほどの太さの鉄で編んだ鎖
塩野 七生 / ロードス島攻防記 amazon
ベッドの周りには古い本が何列も積み上がり、まるで小さなビル街のようだった。
三上 延 / ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち amazon
時計が地虫の鳴くような耳障りな音を立てる
高井 有一 / 夜の蟻 amazon
人形が、顔が汚れ鼻が欠けするうちにオバケのように気味悪くなる
島崎 藤村 / 伸び支度 amazon
地図が、とてつもなく大きな蛾の翅(はね)のように見える
福永 武彦 / 草の花 amazon
靴の踵の外側だけが、癖の悪い人に使われた墨のように斜めに減る
小林 多喜二 / 蟹工船 一九二八・三・一五 amazon
ガラス戸が、曇った古い鏡のようにぼんやりと姿を写す
島尾 敏雄 / 出孤島記 amazon
影絵でも見るようなぼんやりした書き割り
阿部 昭 / 千年 (1977年) amazon
重おもしく莫大な時の堆積を支えた家具
大江 健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
住み手の愛情がしみこんだ光沢を放つ家具類
石坂 洋次郎 / 丘は花ざかり amazon
パラソルを子供の鉄砲のように軽く肩に担ぐ
川端 康成 / 掌の小説 amazon
重なった二人の影が日傘と合わさって、幽霊傘のように一本足を出している
伊集院 静 / 三年坂 amazon
切り抜き文字を貼った糊のせいで、紙が大時化のときの海面のように高く低くうねっている
井上 ひさし / モッキンポット師ふたたび amazon
蒲団の下で亀の子みたいに手足を縮める
古井 由吉 / 聖―ひじり amazon
ガラスが棘のような破片となって突き刺さる
河野 多恵子 / 夢の城 amazon
ガラスの破片が枯れ葉のように散り溜まる
河野 多恵子 / 夢の城 amazon
ガラスの破片が蛍光灯の光を受けて、砕けた宝石のように光る
小林久三 / わが子は殺人者 amazon
ダンスのレッスンをうけている少女のように、かわいいサテンのリボンを結んだ小さな壜(びん)
レイモンド チャンドラー / 湖中の女 amazon
敷布が真っ白で、石灰のようにかわいている
黒井 千次 / 群棲 amazon
生命を与えられた蛇のようにきびきび動く綱
新田 次郎 / 縦走路 amazon
軽く吹き出した紫煙が白い霧のように天井へ立ち昇る
斎藤 栄 / Nの悲劇 amazon
機械油のような金属的な色合いを曖昧に浮かべた、半透明のポマード
黒井 千次 / 春の道標 amazon
数本の釘が深海魚の歯のように突き出す
藤本 義一 / やさぐれ刑事 amazon
鳥の嘴(くちばし)を想わせる塗り箸の先
高樹 のぶ子 / その細き道 amazon
白鳥の胸毛のように温かい柔らかい夜着の感触
菊池 寛 / 藤十郎の恋 amazon
山が毛虫のような色をした地図
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
史上の人物が現実の人物のごとく躍動する
中島 敦 / 李陵 amazon
革のスリッパが氷のように硬く冷たい
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
氷の針のように冷たく小指を刺し貫いた蝋の一雫(ひとしずく)
連城 三紀彦 / 棚の隅 amazon
日向臭い水枕のゴムの匂い
向田 邦子 / 思い出トランプ amazon
太いゴムホースが大蛇のようにずるずる地面を引きずられる
円地 文子 / 朱を奪うもの amazon
坐っていた座蒲団が谷底のように低まって見える
水上 勉 / 越前竹人形 amazon
赤茶けた花崗岩の細末が鮫の皮みたいに固まっている
中 勘助 / 銀の匙 amazon
皿の絵が、窯(かま)から取り出したばかりのように花も葉の色も鮮やかに見える
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
煙草の吸い殻が死体のように積み重ねられる
林 真理子 / 胡桃の家 シガレット・ライフ amazon
懇意な家の門口のような親しみを感じさせる絵
野上 弥生子 / 真知子 (1966年) amazon
古い壁にビラが白々と死の装束に似て貼りついている
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
風船よりは薄くて弱いけどシャボン玉よりは厚いみたいな、粘り気のある膜
景山 民夫 / 遠い海から来たCOO amazon
クリーム色のマグカップは手作りだった。取っ手がいびつで、不思議な格好をしていた。しかし持ちやすく、手触りに親密な感触があった。家族の中だけで通じる温かい冗談のように。
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
ピザ生地で一番薄いクリスピークラフトぐらい磨り減った靴
綿矢 りさ / You can keep it.「インストール (河出文庫)」に収録 amazon
ベッドの足元にはワーク・ブーツが行き倒れた二匹の子犬のような格好でごろんと横たわっていた
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
ナイフで切り取ったような薄い鋭角的な唇にフィルターがそっとくわえられ、火をつけるときに長いまつげが合歓(ねむ)の木の葉のようにゆっくりと美しく伏せられた。額に落ちた細い前髪が彼女の小さな動作にあわせて柔らかく揺れた。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
寒気の悪い部屋の中には、まるでウェザー・リポートのステージみたいに部屋じゅうに白い煙がたちこめていた
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
煙を吸ったのは二口か三口で、あとは全部彼女の指の間でただ灰になってぽろぽろと芝生の上に落ちた。それは僕に時間の死骸のようなものを想起させた。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
甲虫みたいに腐肉をとてもうまそうに齧(かじ)っていた
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
煙は生き物のように肺の壁を引っ掻く
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
ハイヒールの片方が台所の床に転がっている。尖っている踵は横に突き出て、足先を包む固い革の曲線は女の一部のように滑らかだ。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
煙は(木漏れ日の)光の斑点を縫ってゆらゆら立ち迷ったかと思ううち、虹のように美しく消えていった。
檀一雄 / 花筐「花筐・光る道 他四編」に収録 amazon
台所の三和土(たたき)の上には、七輪の炭火だけが目玉のように明るく燃えていた。
林 芙美子 / 清貧の書 amazon
テーブルの上にオイルライターを置いた。ライターは背の低い蝋燭のように静かに燃え続けている。
東川 篤哉 / 謎解きはディナーのあとで amazon
まるで腕の悪い泥棒が無理矢理押し入ったみたいな有様で窓ガラスが割れている
東川 篤哉 / 謎解きはディナーのあとで amazon
並べた。タロット占いの不吉なカードを並べるみたいに。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
いかだみたいに大きなソファ
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
傘はまるで干からびた棍棒のようにぎゅっと堅く巻かれていた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
天吾は小説を書きながら、自分の中に新しい源泉のようなものが生まれていることに気がついた。それほどたくさんの水がこんこんとわき出てくるわけではない。どちらかといえば岩間のささやかな泉だ。しかしたとえ少量ではあっても、水は途切れなくしたたり出てくるようだ。急ぐことはない。焦ることもない。それが岩のくぼみに溜まるのをじつと待っていればいい。水が溜まれば、それを手で掬(すく)うことができる。あとは机に向かって、掬い取ったものを文章のかたちにしていくだけだ。そのようにして物語は自然に前に進んでいった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
大きく深呼吸をした。マイクから顔を背けずにそうしたものだから、ビルの谷間を吹き抜ける突風のような音が録音されていた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
我々は最後までミステリアスな疑問符のプールの中に取り残されたままになる。@略@カラフルな浮き輪につかまった人々が困った顔つきで、疑問符だらけの広いプールをあてもなく漂っている光景が目に浮かんだ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
カーペットは厚く柔らかく、極北の島の太古の苔を思わせた。それは人々の足音を、蓄積された時間の中に吸収していった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
彫刻刀をふるってネズミを木の塊の中から取り出す。木の塊の中に閉じこめられていた架空のネズミを解放する。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
靴は、利用されるだけ利用されて今は死に瀕した哀れな使役動物を連想させた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
椅子は、背もたれや脚の部分は黒い塗装がところどころ剥げ落ち、木の部分が見えてしまっていて、オレンジ色のクッション部分は虫に喰われており、他のみんなが使っているパイプ椅子に比べたら、椅子としては失格なほどアンティークだった。ちょっと動いただけで、椅子の四本の脚はポテトチップスを噛み砕いている時のような、ぱりぱりした音を出してきしむ。
綿矢 りさ / 蹴りたい背中 amazon
眠たげな、老爺が膝をうつような音。
林 真理子 / エンジェルのペン「最終便に間に合えば (文春文庫)」に収録 amazon
アルコールを内燃機関にしてモクモク煙を吐く人間ディーゼル車といったところだ。
中島 らも / 今夜、すベてのバーで amazon
マイクを頰張るかのように顔を近づけ唾を飛ばし
又吉 直樹 / 火花 amazon
同じテイストの筆致で、同じテイストの情景が描かれ、わたしは途中から飽きた。似たようなフレーズが繰り返され長々と続くジャズのインプロビゼーションを聞いているようだった。
村上龍の書いた書評「文藝春秋 2015年 09 月号 [雑誌]」に収録 amazon
風呂敷を米で針坊主のようにふくらまして
林 芙美子 / 魚の序文 amazon
ふとんが死んだ蛇のように、よじれたかたちでのべられてあった。
安岡 章太郎 / 海辺の光景 amazon
両手で鳥が立つ時のような所作をして、乳母車を前方に発車させた。
木山 捷平 / 大陸の細道 amazon
しみのように網膜をはなれず
島尾 敏雄 / 死の棘 amazon
玩具のような小さな十露盤(そろばん)
長塚 節 / 土 amazon
そのゴミは黴菌のようにごちゃごちゃと集団をなして
高見 順 / 如何なる星の下に amazon
波のようにそり返っている真黒に汚れきったチャブ台
椎名 麟三 / 永遠なる序章 amazon
フレイムに塗られた青いペンキは、剥げて、けば立って、枯れた造花のように巻きちぢれていた。
三島 由紀夫 / 金閣寺 amazon
長い竹竿が、小皿の上に箸を置いた感じに転がっていた。
林 芙美子 / 松葉牡丹「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
ゴム管が、強靭な腸のように赤黒い。
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
貸蒲団らしい薄っぺらなのを、蓆(むしろ)でも扱うように舗道にじかにストンストンと落している。
高見 順 / 如何なる星の下に amazon
知らないお方にそちこち書き入れのしてある汚ない原稿をそのままお眼にかけるのは、初めて会ったお方の前でいきなり着物の裏をひっくり返して、つぎはぎをお眼にかけるような気恥かしい心地
森田 たま / もめん随筆〈続〉 amazon
白い画用紙を切り抜いたような麻のスーツ
永井竜男 / 永井龍男全集 5 長篇小説 1 amazon
お銚子の頭のところに青い線が入っていて、お銚子が鉢巻をしているような塩梅
高見 順 / 如何なる星の下に amazon
そのランプのガラスの壺は、石油を透して琥珀(こはく)の塊のように美しかった。
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
家が燃え始めると、ぽんぽん弾薬が爆竹のようにいつまでもなり出すのです。
火野 葦平 / 麦と兵隊 amazon
檻のような寝台の格子
横光 利一 / 春は馬車に乗って amazon
六月の末でもあるから筵(むしろ)のような蒲団(ふとん)もさほど苦にもならず
平出 修 / 逆徒 amazon
嗅ぎなれた薬品の臭いは、履きなれた靴のようだった。
安部 公房 / 他人の顔 amazon
体重計が、ちょうど私の刑執行の時刻を告げ顔の絞首台のようにみえた。
三島 由紀夫 / 仮面の告白 amazon
生々しい絵具を投げつけたような、わけのわからない絵
林 芙美子 / 茶色の目「林芙美子全集〈第15巻〉茶色の目 (1952年)」に収録 amazon
船が岸から遠ざかると、娘の置き忘れた青いハンカチが草の上にあじさいの花のように見えた。
林 芙美子 / 松葉牡丹「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
麦藁で田螺(たにし)のような形に捻(よじ)れた籠を作って
長塚 節 / 土 amazon
逆立ちしたピラミッドのような漏斗
堀田 善衛 / 鬼無鬼島 amazon
柱時計が博物館のお面のようにならんで
宇野浩二 / 蔵の中 amazon
鳥の嘴(くちばし)のように動かせる箸
島崎 藤村 / 夜明け前 (第1部 上) amazon
朝日(たばこの銘柄)の吸い口がペンキの杭のように突きさしてあって、どれもこれも薄く紅がついている。
林 芙美子 / 風琴と魚の町/清貧の書 amazon
蒲団は薄いのが一枚しかない。彼はその中にくるまって、柏餅のようになって寝た。
島崎 藤村 / 春 amazon
原稿は烏のようなものだ、放せば立つ
室生 犀星 / 杏っ子 amazon
獣の爪のようなフォーク
島崎 藤村 / 夜明け前 (第1部 上) amazon
願わくは書くものすべてが生きのいい鮎のようであれ。
三浦 哲郎 / 随筆集 一尾の鮎 amazon
まるで妻の声のようなそのやさしく粘り気のある音
筒井 康隆 / 夢の木坂分岐点 amazon
巨大な青虫のような、何でもかでも無造作につめこんだ合切袋
なだ いなだ / 童話ごっこ amazon
おびただしい絹糸は百花を見るようにひしめいていた。
芝木 好子 / 隅田川暮色 amazon
鏡台は、おもちゃのように小さく、古めかしいものであった。
永井 龍男 / 青梅雨 amazon
青いペンキはあばたのように剥げ
山本 周五郎 / 青べか物語 amazon
シガレットを、とがった唇の先にくわえると、まるで窒息しそうな魚のように、エラ骨から喉仏までぐびぐびとうごかしながら、最初の一ぷくをひどく忙しげに吸いこむのだ。
安岡 章太郎 / 海辺の光景 amazon
馬の蹄(ひづめ)みたような厚底の靴
永井 荷風 / あめりか物語 amazon
長い昆布のようなぼろくず
野間 宏 / 真空地帯 amazon
煙突のようにつぎつぎに煙草を吹かし
火野 葦平 / 糞尿譚 amazon
あんなに高い、高いところに張り渡した蜘蛛の糸かのような細い綱
片岡鉄平 / 綱の上の少女
蒲団から亀のように首を出す
高見 順 / 如何なる星の下に amazon
銀は赤子を起きぬように、莢(さや)からぬけるように少しずつからだを抜いて出
した。
和田伝 / 沃土「和田伝全集 第2巻」に収録 amazon
壁の鏡はまるでさっき出土されたもののようにどんより曇っている。
吉本ばなな / 哀しい予感 amazon
駱駝の背中のように凹凸のひどい寝台
北条 民雄 / いのちの初夜 amazon
巻煙草の吸い殼を蜂の巣の如く火鉢の中へ突き立てて
夏目 漱石 / 吾輩は猫である amazon
艶消し珠玉のような、なまめかしい崇高美
岡本 かの子 / 鶴は病みき amazon
網は今まで一枚の板のように堅く編まれて
石川達三 / 蒼氓(そうぼう) amazon
凧(たこ)の緒のようなワイア
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
私の詩の組み込まれている頁だけが、まるで一つの居留地のように、孤立した全く別個の特殊地帯を作り上げている
井上 靖 / 猟銃「猟銃・闘牛 (新潮文庫)」に収録 amazon
馬の蹄(ひづめ)のような形に高く積み上げられて土で出来た竈(かまど)
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
弁当箱のように小さい行李の蓋
林 芙美子 / 風琴と魚の町 amazon
青く明るく照して、二つの寝床がその中に小舟の浮んでいるように見えた。
加能 作次郎 / 世の中へ amazon
状袋の糊を湿めして、赤い切手をとんと張った時には、いよいよクライシスに証券を与えたような気がした。
夏目 漱石 / それから amazon
受取った傘の滑らかな柄が生物のような体温を秘めている。
黒井 千次 / 群棲 amazon
骨董は女と同じだ。@略@変なものを掴むようでなくっちゃ、自分の鑑賞眼の発展はあり得ない。骨董にも女にも相場があるようで相場がないものだ。@略@惚れるから相場があり、自分の発展がある。
井伏 鱒二 / 珍品堂主人 amazon
行李の中には出来上った更紗の煙草入が刺身のように並べて這入っていた。
林 芙美子 / 牡蠣「風琴と魚の町/清貧の書 (新潮文庫 は 1-4)」に収録 amazon
この古い押し花のにおいのするような奥ゆかしい日記
堀 辰雄 / 更級日記「更級日記など」に収録 amazon
絹沓(きぬぐつ)があでやかに花弁のように見えた。
小田 岳夫 / 城外「城外・夜ざくらと雪―小田岳夫作品集 (1980年)」に収録 amazon
砥石(といし)で鎌をとぐ時のような低姿勢で、乳母車をすうッとゆるやかに発車させた。
木山 捷平 / 大陸の細道 amazon
胸を刺すような鋭い号外の鈴の音
石川 達三 / 蒼氓 amazon
巻きなおした時計が兵隊の行進のようだ。
幸田 文 / 流れる amazon
日本の文学者が、好んで不安という側からのみ社会を描き出すのを、舶来の唐物のように見なした。
夏目 漱石 / それから amazon
暗いロビイには大衆食堂のような安っぽい卓子と椅子が並んでいる
大岡 昇平 / 武蔵野夫人 amazon
木の葉に触れているのと同じように物静かで、しっとりしている。
谷崎 潤一郎 / 陰翳礼讃 amazon
パラシュートのように薄くてしわしわの生地
椎名 誠 / 長く素晴らしく憂鬱な一日 amazon
蜩(ひぐらし)の鳴くような音のする鈴
中 勘助 / 銀の匙 amazon
それらの塗りものの沼のような深さと厚みとを持ったつや
谷崎 潤一郎 / 陰翳礼讃 amazon
紫水品のことを思わせた。
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
ぼろはまるで魚か牛のはらわたのように、さむそうにそこにのびている。
野間 宏 / 真空地帯 amazon
煙草の匂いが、まだ微かに、香のように、立ちこめているような気がした。
福永 武彦 / 草の花 amazon
鞄(かばん)のような財布を首から吊るして
織田 作之助 / 夫婦善哉 amazon
ガラスは糊でも塗ったように埃りで汚れて、曇っている。
葛西 善蔵 / 悪魔「葛西善蔵全集〈第1巻〉 (1974年)」に収録 amazon
異人の髭みたいな糸
十一谷義三郎 / あの道この道
短い砲身を助けるために、一段高く土嚢が積まれているのが、特別あつらえの座布団のようにみえる。
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
荷物の風呂敷から刀の鞘が足のように食(は)み出していた
川端 康成 / 伊豆の踊子 amazon
スプーンが朝の光でまぶしく、まるで兇器のやうにきらめいた
丸谷 才一 / 中年「丸谷才一全集 第三巻 「たった一人の反乱」ほか」に収録 amazon
フォークの尖はミシン機械のように動く。
岡本 かの子 / 食魔 amazon
作品を見るもののすべてを魔法の渦のように自分の世界にひきずりこむのです。
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
更紗の風呂敷に包んで、あたかも鳥籠でもぶら下げているような具合
夏目 漱石 / 明暗 amazon
大黒様のような袋を肩にかついで
木山 捷平 / 大陸の細道 amazon
パイプをみがきあげると胸のポケットからモロッコ皮の煙草袋をとりだし、焼香するような手つきで葉をひとつまみずつ火皿へつめこんだ。
開高 健 / パニック「パニック・裸の王様 (新潮文庫)」に収録 amazon
腸づめのようなズックの袋を、めいめいの肩にのせて
なだ いなだ / 童話ごっこ amazon
ホースは畦道の小川まで伸びて、それに綱引きのように、人がたかっている。
牧野 信一 / ゼーロン amazon
板のようにしゃちこ張って身に着かないで起きているよりも一倍寒く感ずる。
国木田 独歩 / 竹の木戸 amazon
獣の巣のように敷きっぱなしになっている寝床
吉行 淳之介 / 鳥獣虫魚 (1977年) amazon
京都は、東西に走る通りと南北に走る通りが垂直に交差する、碁盤の目のような都市です。私は、そんな理路整然とした街並みの中で@略@周期表が目に入った瞬間、忘れていた故郷の京都の街並みがフラッシュバックしてきたのです。その理由は、周期表で示された秩序が、京都の世界観と見事に共通しているように感じられたからです。
吉田 たかよし / 元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち amazon
量子化学を理解していない人が教える周期表の知識は、単なるセミの抜け殻だと私は思います。
吉田 たかよし / 元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち amazon
一見しただけでは複雑かつ無秩序に見える周期表ですが、きちんとポイントをつかめば、美しい交響曲の楽譜のように元素が秩序だって並び、ハーモニーを奏でていることがおわかりいただけるでしょう。
吉田 たかよし / 元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち amazon
京都の街と同じように碁盤の目状をした周期表
吉田 たかよし / 元素周期表で世界はすべて読み解ける~宇宙、地球、人体の成り立ち~ amazon
絹を拾った。本当に上等のものだった。手ざわりも柔らかく、ふわりと浮かべば夜空に舞い上がっていきそうな白さだった。
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
本物の画家が描く絵は祈りにも似ている
伊坂 幸太郎 / ラッシュライフ amazon
個室のコート掛けには、すでに三枚のコートが横並びに掛けてあり、まるで今日の食事のメンバーが壁に吊るされているみたい。私が灰色のコートを一番端に引っかけたら死体は四つになった。
綿矢 りさ / 仲良くしようか「勝手にふるえてろ (文春文庫)」に収録 amazon
新聞が、巨大な蛾のごとく宙を舞った
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon
お菓子のパッケージって、ものすごくカラフルなのだ。赤、黄、青、緑、色分けされずらりと棚に並べられたポテトチップスは、肉眼ではただ並んでいるだけなのに、写真のバックになると、オモチャの王国の城壁みたいに、チャチでけばけばしくて、おもしろい。オモチャの城でVサインをしているあたしと綾菜。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー (文春文庫)」に収録 amazon
正面の壁からはモーツァルトの肖像画が臆病な猫みたいにうらめし気に僕をにらんでいた。
村上春樹「風の歌を聴け (講談社文庫)」に収録 amazon
小冊子や雑誌が僕の机のまわりに蟻塚のように積み上げられていた。@略@片付ける順序に本を積み変えてみた。おかげで蟻塚は前よりずっと不安定な形になった。新聞の一面に載っている性別年齢別の内閣支持率のグラフのような形である。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
煙草は湿った新聞紙を丸めてガスバーナーで火をつけたような味がした。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
水泳のビート板ほどもあるメニュー
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
92500という彼のベスト・スコアを記念すべく、鼠(人名)とピンボール台の記念写真を撮らされたことがある。鼠はピンボール台のわきにもたれかかってにっこりと笑い、ピンボール台も92500という数字をはじき出したままにっこりと笑っていた。@略@鼠はまるで第二次大戦の撃墜王のように見えた。そしてピンボール台は古い戦闘機のように見えた。整備士がプロペラを手でまわし、飛び上がった後でパイロットが風防をパタンと閉めるような戦闘機だ。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
北欧風の小さな白木のベッドだ。二人が乗ると、公園のボートのような軋んだ音を立てる。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
テーブルや椅子には脚に小さな靴下が履かせてあって、寒がりの四本足の動物のように見えた。
綿矢 りさ「しょうがの味は熱い (文春文庫)」に収録 amazon
ハンモックに上半身を乗せて、砂だらけの白い足に勢いをつけ、ほとんど転がりこむようにして縄目のなかに仰向けで寝転べば、見た目ほどの繊細さと軽やかさはなく、縄目は強く背中に当たり、ぎしぎしと鳴り、いつか木の縄がほどけてしまうのではないかと思わせる不安定さが、寝転がっている限り続く。虫を捕らえた食虫花のように縄の両側が段々すぼまってくる。
綿矢 りさ「しょうがの味は熱い (文春文庫)」に収録 amazon
固まった白いクリームのような形の椅子
川上 未映子 / あなたたちの恋愛は瀕死「乳と卵(らん) (文春文庫)」に収録 amazon
バレリーナのチュチュのような小さな紙の皿
中島 京子 / 対談 中島京子 × 船曳由美「小さいおうち (文春文庫)」に収録 amazon
柱時計の秒針がどもったさざ波のような音を立てている
三島由紀夫 / 花ざかりの森 amazon
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