生と死の比喩表現の例文 一覧

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生と死の比喩を使った文章の一覧(103件)
死を細かいちりみたいに肺の中に吸い込みながら生きる
村上 春樹 / 螢・納屋を焼く・その他の短編 amazon
放浪を続けて犬のように死ぬ
大庭 みな子 / がらくた博物館 amazon
死者の生なましく白く、草のような
大江 健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
のように無表情な死骸
川端 康成 / 掌の小説 amazon
朝露の消えるようなはかない臨終
山本 周五郎 / 髪かざり amazon
道端の霜の消えるごとく、世に無名の死に終わる
山手 樹一郎 / 品川砲台(薩摩浪士) amazon
結局、彼女が拳銃の引き金を引くことはなかった。最後の瞬間に彼女は右手の人差し指に込めた力を緩め、銃口を口から出した。そして深い海底からようやく浮かび上がってきた人のように、大きく息を吸い込み、それを吐き出した。身体中の空気を丸ごと入れ換えるみたいに。青豆が死ぬことを中断したのは、遠い声を耳にしたからだった。そのとき彼女は無音の中にいた。引き金にかけた指に力を入れたときから、まわりの騒音はそっくり消えていた。彼女はプールの底を思わせる深い静寂の中にいた。そこでは死は暗いものでも怯えるべきものでもなかった。胎児にとっての羊水のように自然なものであり、自明なものであった。悪くない、と青豆は思った。ほとんど微笑みさえした。そして青豆は声を聴いた。 その声はどこか遠い場所から、どこか遠い時間からやってきたようだった。声に聞き覚えはない。いくつもの曲がり角を曲がってきたせいで、それは本来の音色や特性を失っていた。残されているのは意味を剥ぎ取られた虚ろな反響に過ぎない。それでもその響きの中に、青豆は懐かしい温かみを聴き取ることができた。声はどうやら彼女の名前を呼んでいるようだった。 青豆は引き金にかけた指の力を抜き、目を細め、耳を澄ませた。その声の発する言葉を聞き取ろうと努めた。しかし辛うじて聞き取れたのは、あるいは聞き取れたと思ったのは、自分の名前だけだ。あとは空洞を抜けてくる風のうなりでしかなかった。やがて声は遠くなり、更に意味を失い、無音の中に吸い込まれていった。彼女を包んでいた空白が消滅し、栓がとれたみたいにまわりの騒音が一挙に戻ってきた。気がついたとき、死ぬ決心は既に青豆の中から失われていた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
誰にも見とられずに野良犬のように子供をうむ
平林 たい子 / 施療室にて「こういう女・施療室にて (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
観音開きの戸のようにメスが入った皮膚を開き
島田 雅彦 / ある解剖学者の話「ドンナ・アンナ (新潮文庫)」に収録 amazon
死んだ時は手や足は箒の柄のように痩せていた。
田宮 虎彦 / 異母兄弟「異母兄弟―小説 (1957年) (カッパ・ブックス)」に収録 amazon
胴だけになった兵士が、一人大きな蟇(がま)のように
野上 彌生子 / 哀しき少年「野上彌生子全小説 〈8〉 哀しき少年 明月」に収録 amazon
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