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乗り物の比喩を使った文章の一覧(280件)
ほんの少しだけ欠けた白い月が目の前に浮かんでいた。右手には新宿の街の光が、左手には池袋の街の光が見えた。車のヘッドライトが鮮やかな川の流れとなって、街から街へと流れていた。様々な音がまじりあったやわらかなうなりが、まるで雲みたいぼおっと街の上に浮かんでいた。
村上春樹 / ノルウェイの森 amazon
闇をつんざきつつ、五台の自動車が、無言のまま物の怪に憑かれたように疾走する
徳永 直 / 太陽のない街 (1953年) amazon
二本の飛行機雲が電車の線路みたいに平行にまっすぐ西に進んでいくのが見えた
村上 春樹 / ノルウェイの森 下 amazon
船首が、恍惚とした薄い顎のような形に仰向く
三島 由紀夫 / 午後の曳航 amazon
油のような粘りを持った大きな波浪がゆったりと襲ってきては、船を山から谷へ谷から山へと運ぶ
井上 靖 / 天平の甍 amazon
イカダが矢がすりの模様のように、三つが互い違いにつなぎ合わせてある
山本 有三 / 波 amazon
車がゆるやかな流れに吸い込まれるイカダのように右に寄って行く
干刈 あがた / ウホッホ探険隊 amazon
水が板のような堅い感じを船底にぶつけ、そのたびに船が浮かび上がる
幸田 文 / おとうと amazon
クレーンが動きはじめると、犬のうなるような低い音が聞こえてくる
灰谷 健次郎 / 太陽の子 amazon
手おいの猪のような、(客が)こぼれそうな鈴なりの汽車
小島 信夫 / 汽車の中「アメリカン・スクール (新潮文庫)」に収録 amazon
鮫が獲物をひと呑みするような派手な動きで車が走り出す
藤本 義一 / 標的野郎(ターゲット・ガイ) amazon
海底の牛が啼くような鈍い汽笛
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
貨物船の霧笛が、群れをはぐれた仔牛のような鋭い悲鳴を上げ始める。霧笛はそれぞれの音階に短く長く闇を貫き、山の方向へ飛ぶ。
村上 春樹 / 1973年のピンボール amazon
八つ当たりのようにエンジンを空ぶかしさせる
中上 健次 / 枯木灘 amazon
赤ん坊が口唇で遊ぶときのプリプリと鳴らすようなエンジン音
伊集院 静 / 三年坂 amazon
煙を吐いたヘリコプターが安定を失いながら木の葉が舞うように落下してくる
七尾 与史 / 死亡フラグが立ちました! (宝島社文庫) amazon
オートバイが、猛禽類に似た鋭い叫びを残して通り過ぎる
辻井 喬 / 暗夜遍歴 amazon
自動車がフィルムの影のように音もなく走り去る
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
クラクションがかすれて錆びついたような音を出す
泉 優二 / さよならと言ってくれ amazon
巨大な斧の断面のような船腹
三島 由紀夫 / 午後の曳航 amazon
線路の上に重しのようにずしりと止まる機関車
尾辻 克彦 / 父が消えた amazon
艦艇が小さく小さく、玩具のように海上に置かれている
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
飛行機が一瞬、水中から波の上浮かび上がった泳ぎてのように、ほっと一いきつくように白い腹を見せる
島尾 敏雄 / 出孤島記 amazon
船が見る見る巨大な音楽のようにふくれ上がる
三島 由紀夫 / 午後の曳航 amazon
ボートが、広い海の上に蚊のように小さく、ところどころに浮いている
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
黒い貝殻のように光る自動車の窓
三島 由紀夫 / 午後の曳航 amazon
パトカーのサイレンの音が、獲物を追いつめていく勢子の掛け声のように響く
小林久三 / わが子は殺人者 amazon
音のあいまいな霧がひろがるように、遠い汽笛がおぼろげに伝わってくる
三島 由紀夫 / 午後の曳航 amazon
坂道を風のように一気に駆けのぼるジープ
阿久 悠 / 瀬戸内少年野球団〈上〉 amazon
錨が、錨穴のところに大きな黒い鉄いろの蟹のようにとりつく
三島 由紀夫 / 午後の曳航 amazon
兜(かぶと)虫のように見える装甲車
高橋 和巳 / 我が心は石にあらず amazon
自動車が、カブトムシの背中のように光った尻を見せながら泥水をはねあげて行く
安岡 章太郎 / 質屋の女房 amazon
乗用車が一台、起き上がれない甲虫のように腹を見せたまま放置される
干刈 あがた / ウホッホ探険隊 amazon
高速道路を走る車の音が、河の流れのように聞こえる
高井 有一 / 夜の蟻 amazon
マストより高い灰色の絶壁になって波が押し寄せてくる
曽野 綾子 / 夫婦の情景 amazon
鉄のライオンのような機関車
尾辻 克彦 / 父が消えた amazon
機関車が、真っ黒な大きな獣のよう
久米 正雄 / 学生時代 amazon
汽笛が乳色の朝靄を縫うようにして長々と響きわたる
久間 十義 / ヤポニカ・タペストリー amazon
開けっ放した窓からしばしば汽笛が悪魔のように入ってくる
三島 由紀夫 / 午後の曳航 amazon
鞭で宙を切るような鋭い汽笛
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
瀕死の野獣の悲鳴のような汽笛が聞こえる
高橋 和巳 / 捨子物語 amazon
鳥のように速く、岩のように頑丈な楠の刳り船
高田 宏 / 木に会う amazon
先を走っている車の尾灯の赤い連なりが、ルビーの首飾りのように曲がりながらのびる
柴田 翔 / 燕のいる風景 amazon
車の列が光の河になって夜を流れる
吉本 ばなな / キッチン amazon
自動車のヘッドライトが僕の身体を洗うように次々に走り抜ける
福永 武彦 / 草の花 amazon
自動車の音が、大きな昆虫の羽音のように聞こえる
北村 薫 / 水に眠る amazon
年老いた女の吐息に似た音をたてて走る車
大庭 みな子 / 三匹の蟹 amazon
飴でからめられたような車の群れ
鷺沢 萠 / 大統領のクリスマス・ツリー amazon
漕いでゆく艫(ろ)の音が、獣の子の乳をもとめる声のよう
中 勘助 / 銀の匙 amazon
トラックが獣のような底深い唸りをあげて出発を待っている
五木寛之 / 私刑の夏 【五木寛之ノベリスク】 amazon
家族の死を告げる妖精の泣き声のような、長く尾をひくパトカーのサイレン
フレドリック・ブラウン / 霧の壁 amazon
日本中のパトカーが集まってきたのではと思われるほど、凄まじいサイレンの音が夜空にこだまする
奥泉 光 / 石の来歴 amazon
パトカーのサイレンが赤くとがったような音をあげて、あたりの闇を切り裂く
椎名 誠 / 新橋烏森口青春篇 amazon
パトカーのサイレンの音が、四方八方から湧き上がって、波のように押し寄せる
小林久三 / わが子は殺人者 amazon
船が竿を弓のように張って流れを遡(さかのぼ)って行く
田山 花袋 / 田舎教師 amazon
犇々(ひしひし)と上げくる秋の汐(しお)が、廂(ひさし)のない屋根舟を木の葉のように軽くあおる
長与 善郎 / 青銅の基督 amazon
ヘッドライトが地獄の業火のように目の前で燃えさかる
小池 真理子 / 追いつめられて amazon
青空に白い綿のように尾を引いているジェット機
マイ・シューヴァル / バルコニーの男 amazon
トラックが馬の尻尾のように跳ね上がりながら突進する
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
ライトバンがロデオの馬のようにお尻を跳ね上げながら走る
干刈 あがた / ウホッホ探険隊 amazon
飛行機の翼に塗った銀の色が、水銀のようにこぼれそうに鮮やかに翻(ひるがえ)る
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
こまかい錫(すず)の破片を浮かべたように日にキラめく爆撃機の機影
阿部 昭 / 千年・あの夏 amazon
ホイールは鋳造されたばかりの銀貨みたいにまぶしく光っていた
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
ひどく重い物を積んだ長距離トラックが崩壊し始めた氷山のような不吉な音を立てて高速道路を走り抜けていった。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
メルセデスはききわけの良い巨大な魚のように、音もなく夜の闇に消えていった
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
747が銀色の楔(くさび)のように激しい角度で空にのめりこんでいく
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
敏感でアグレッシブな車だった。反応が鋭く、パワフルだった。アクセルをちょっと踏むと月まで飛んでいってしまいそうだった。
「そんなに頑張らなくていいんだよ。気楽にやろう」と僕はダッシュボードをとんとんと叩き、マセラティに言いきかせた。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
ヤゴのような形をした自衛隊の対潜哨戒機
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
彼はしばらくあてもなく車を走らせた。五反田君のギア・チェンジはスムーズで正確だった。車はかたりとも震えなかった。加速は優しく、ブレーキは静かだった。街の騒音が切り立った谷のように我々のまわりにそびえていた。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
車体は鳥肌のような雨粒がつき、重くなった水玉が冬の虫みたいにゆっくりと下に垂れていく
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
巨大な水鳥の叫び声そっくりの音で追い抜いていくトラック
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
鎔鉱炉から流れ出る液体の鉄に見える(ヘッドライトに照らされた雨の)曲がりくねった道路
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
赤色灯の赤い斑模様を病院の壁面にぐるりと投げかけ、サイレンだけがやんだ。直後、晴れた空から静寂が降りてきて、スポットライトのように救急車の回りに無音の空間を作りあげた。
鈴木 光司 / らせん amazon
市中を馳(はし)る電車の響きは岸打つ波のごとくに消えつ起りつ
永井 荷風 / あめりか物語 amazon
列車の爆音は電光のようなすさまじい色彩を放った。
檀 一雄 / 花筐「花筐・白雲悠々―檀一雄作品選 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
馬車が鈴をならしてとおるごとに白い砂ほこりが砲煙のように舞いあがる。
尾崎 士郎 / 人生劇場 青春篇 amazon
馬車のなかは、水のような風がすいすい吹き通った。
徳田 秋声 / 足迹 amazon
窓ガラスが滝をながしたようになって、景色もなにも見えない。
阿川 弘之 / 雲の墓標 amazon
白羽のような波を蹴って進む自分の船
長与 善郎 / 陸奥直次郎 (1950年) amazon
神話の中の恐竜のように舌を吐き爪をならして小舟におそいかかる波頭
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
大きな波のうねりにマストがゆれて、星座のたてごとを、かき鳴らしているようであった。
庄野 英二 / 星の牧場 amazon
飛行機の黒い大きい影が疾風のように地面をかすめ去った。
梅崎 春生 / 桜島 amazon
古ぼけた汽車は明るい殼をトンネルに脱ぎ落して来たかのように
川端 康成 / 雪国 amazon
脇腹には病人のかさぶたのように貝殻がびっしりとこびりついている。
村上 春樹 / 風の歌を聴け amazon
麗子は警部のジャガーに乗ったことが一度もない。勧められるたび拒否してきたのだ。理由は自分でもよく判らないが、ただなんとなく、本当になんとなくなのだが、この銀色のジャガーはオスのような気がして仕方がないのだ。それも発情したオス。
東川 篤哉 / 謎解きはディナーのあとで 2 amazon
中年の運転手は、まるで舳先(へさき)に立って不吉な潮目を読む老練な漁師のように、前方に途切れなく並んだ車の列を、ただ口を閉ざして見つめていた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
午後の太陽の光を受けて、フロントグラスがミラーグラスのようにまぶしく光っていた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
レールの立てる単調な音に耳を澄ませていた。中央線はまるで地図に定規で一本の線を引いたように、どこまでもまっすぐ延びている。@略@電車は目的地に向けて一直線にひた走っていくだけだ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
電車が間もなく発車するという早口の簡単なアナウンスがあり、やがて旧弊な大型動物が目覚めて身震いするみたいに、ぶるぶるという大げさな音を立てて車両のドアが閉まった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
タクシーというよりは遊園地の乗り物に乗っているみたいだった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
バイクのエンジン音が、拷問機械のうなりを部屋に響かせ
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
自動車がクラクションを鳴らす音が聞こえた。大型トラック特有の、霧笛のような深い音だ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
雨はもうすっかりあがっていたが、車はまるで水の中をくぐり抜けてきたみたいに全身から水滴をしたたらせていた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
多くの輸送トラックのあいだに、まるで無骨なサイの群れに紛れ込んでしまったしなやかなレイヨウのように、銀色のメルセデス・ベンツ・クーペが一台混じっていた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
二人のまわりを夜の街が、夜光虫に彩られた海流のように流れ過ぎていった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
私は爽快で、ひどく晴ればれとしていた。透明な、自分がからっぽになったような澄んだ気分のまま、私は、まるで一箇の荷物のようにバスの振動に揺られていた。
山川 方夫 / 海岸物語「海岸公園 (1961年)」に収録 amazon
道路の流れはまだ滞っていた。苛立ったのか、前方の車からクラクションが鳴った。遠吠えに反応する犬のように、別の車からもクラクションが発せられる。
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー 角川文庫 amazon
そしてさらにそのRV車は、生きていることを誇示するかのように、身体を震わせていた。エンジンがかかったままなのだ。
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon
勢い良く通っていく。 川の堰が切れて濁流が流れていくような、騒々しさだった。激流が、目前を通過していく。
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon
七尾は以前、一度だけ参加したことのあるカジノのルーレットのことを思い浮かべていた。どこに球が落ちるのか、それをもったいつけるかのようなゆっくりとした動きでルーレットは止まるが、新幹線もそれと似た雰囲気を見せた。駅で待つどの乗客の前で車両が止まるのかを選ぶように、どこにしようかなあのねのね、と焦らすかのような様子で、速度を落とし、そして、乗客の前に止まった。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
新幹線は止まったが、なかなか扉は開かず、水中で息を止め、吐き出すのを我慢するかのような、間がある。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
扉が静かに、素早く開く様は、昔、映画で観た宇宙船の内部を思わせた。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
連結部の上に立つ。重なる床板のようなものが、生き物の関節じみた動き方をする。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
その時、自分たちの座っている場所とは反対側の窓に、すれ違う新幹線が見えた。一瞬のことではあるが、激しい音を立てて、後方へと走り抜けて行く。穏やかに疾駆することは許さないぞ、刺激があってこその人生だ、とお互いを揺らし合うかのようだった。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
二号車の扉が開いた。威勢の良い溜め息とでもいうような、噴射音が響く。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
建物や地面がびゅんびゅんと後方に投げ捨てられていく。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
吹き飛ばされるかのように、後ろへ通り過ぎていく建物を目で追いながら
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
車両と車両の連結部は、うねうねと、爬虫類の動きを模すように左右に揺れる。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
唐突に新幹線が揺れた。ほんの短い間だったが、獣が毛に付着した水を払うために、ぶるっと胴を震わせるかのような、そういう揺れだった。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
新幹線の揺れは単調ではなく、生き物にも似た不規則な動きを見せるが、時折、下から突き上げられ、ふわりと身体が浮く。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
車両の揺れが、相変わらず、木村を小突くようだ。忍耐の鎖を破るように唆してくる。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
走行する響きは鼓動に似ている。巨大な鉄の血管の上に載っているのではないか。そんな気持ちになった。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
新幹線が速度を落としはじめ、走行音も変わる。つかんでいた線路をゆっくりと手放すかのように、響きが軽くなる。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
乗り込んでみるとマッチ箱のような汽車だ。
夏目 漱石 / 坊っちゃん amazon
巨大な昆虫のうずくまったように、緑のペンキで塗ったトラック
火野 葦平 / 糞尿譚 amazon
三保の松原を走らせた天の羽車のような静かさで、一台の車が通って行った。
田村 俊子 / 木乃伊の口紅 amazon
昌樹の横を車のエンジン音が風のように過ぎた。
黒井 千次 / 群棲 amazon
五台の自動車が、フィルムの影のように音もなく走り去るのを見た。
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
頭上と横とを流れるヘッドライトの光は靄のやうだったり稲妻のやうだつたりする。
丸谷 才一 / 初旅「横しぐれ (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
煙脂煙管(やにきせる)の如く、ぎっちり詰まって動けなくなった
里見 トン / 美事な醜聞「初舞台・彼岸花 里見トン作品選 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
不良の酒のように絶えざる車体の微動につれて人を酔わす。
永井荷風 / あめりか物語 amazon
太鼓の内部のような船室
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
汽船はゼンマイ仕掛のおもちゃのそれのようだった。
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
明るく点(とも)して泊る艦隊の灯が水平線に横たわる星河のように望まれた。
石原 慎太郎 / 行為と死 (1967年) amazon
ごっとん、ごっとん、と、まさぐりながら歩いているような機械ののろさ
火野 葦平 / 麦と兵隊 amazon
美しい東洋の満月のさしこむ硝子張りの水族館のような箱(自動車)の中でいつの間にか眠ってしまった。
火野 葦平 / 麦と兵隊 amazon
三本煙突をつけた白い小さな砂糖菓子のような汽船が生意気そうに走っていた。
椎名 麟三 / 美しい女 amazon
あたかも意地の悪い馬が馴れぬ乗手にするように、船体は猛烈にその背を振った。
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
前方からジープがさッとそれ自体、一つの光線の束になって躍りかかるように走ってきた
井上 友一郎 / ハイネの月「日本の文学 64 井上友一郎」に収録 amazon
川船のまわりに人魂が漂うように、船頭のつけた提燈の火が波に赤い色をうつしていた。
芝木 好子 / 隅田川暮色 amazon
タクシーが、吸い寄せられたように、彼の眼前に滑って来た。
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
米内火艇が引っかいたような水脈を曳いて疾駆していた。
大岡 昇平 / 俘虜記 amazon
香港のメインストリートを、まるで凶器の如く飛び交っている車
高峰 秀子 / 旅は道づれガンダーラ amazon
汽車の響きは遠ざかるにつれて、夜風のように聞えた。
川端康成 / 雪国 amazon
灯を消した二台の自動車は疾風のように、夜気を揺すぶりながら見えなくなった――。
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
船が水鳥のように真白でこぢんまりしている
曽野 綾子 / 遠来の客たち amazon
その怪物のような図体
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
眼に蓋をするように、冷たい石垣が@略@視野一杯に滑りこんで来る。
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
火を吹いて流星のように直線に落ちて行くのは、日本の戦闘機だ。
阿川 弘之 / 雲の墓標 amazon
流星花のようにその飛行機は墜ちて
稲垣 足穂 / 弥勒 amazon
ランチが、本船の周りを水蜘蛛のようにグルグル廻りながらついて来た。
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
自動車が光の縞模様のようにひんぱんにすれちがい
石坂 洋次郎 / 若い人 amazon
ひょいと右を見ると、目の前に丘のような荷物自動車が迫って来ていた。
里見 トン / 桐畑 amazon
ピカピカ黒光りのカブト虫のような自動車。
坪田 譲治 / 風の中の子供 amazon
マストや柱や欄干は、髮を毟(むし)られる女のような悲鳴をあげて身を撓(たわ)めた。
前田河広一郎 / 三等船室「現代日本文学大系 (59)」に収録 amazon
自転車のタイヤが雪をくわえて鼠の鳴くように、きしんだ
室生 犀星 / 杏っ子 amazon
電車の路面が、木琴の鉄板のように凸凹している。
林 芙美子 / 骨「林芙美子傑作集 (1951年) (新潮文庫〈第201〉)」に収録 amazon
湯気のようにむんとする温かみ
前田河広一郎 / 三等船室「現代日本文学大系 (59)」に収録 amazon
編隊がまた西の空から芥子粒(けしつぶ)ほどの姿をみせた。
遠藤 周作 / 海と毒薬 amazon
鮨(すし)のように押しつめられてる
夏目 漱石 / 明暗 amazon
警笛(クラクソン)がジジーと嗄(しわが)れたような音を立てて鳴り始めた。
火野 葦平 / 麦と兵隊 amazon
車は舌打ちするように激しくスタートして、走り去った。
河野多恵子 / たたかい
陸地がすうっとすべるように近づいたと思うと、船はもう渚ちかく寄っていた。
壺井 栄 / 二十四の瞳 amazon
タクシーは天道虫のように、ゆるい坂から山の手へのぼる。
永井 龍男 / 絵本「朝霧・青電車その他 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
古風な機関車が真白な煙りを吐いて止まっている。それは葱(ねぎ)をふみながらきき耳立てた雄(お)ん鶏(どり)に似ている。
永井 龍男 / 絵本「朝霧・青電車その他 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
笹の葉のような軽快なかたち
山本 周五郎 / 青べか物語 amazon
船は風に逆らい、黙って闇へ突き進む。それは何か大きな怪物のように思われた。
志賀 直哉 / 暗夜行路 amazon
飛行機は蚊よりも脆く落ち
志賀 直哉 / 暗夜行路 amazon
列車が、尻をぶっ叩かれた馬のように、仕方なしにあえぎ始める
小島 信夫 / 汽車の中「新潮日本文学 54 小島信夫集 小島信夫集 抱擁家族 アメリカン・スクール 吃音学院 他」に収録 amazon
柄杓(ひしゃく)が水を掬(すく)うように、デッキは波浪を掬い込んだ。
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
反古紙(ほごがみ)を貼りつけたような日本の漁船
前田河広一郎 / 三等船室「現代日本文学大系 (59)」に収録 amazon
輝きのない鈍感な海は、白人の艦艇をも、危険性のない浮標のように、ものうく載せていた。
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
自転車はすうっと鳥のように近づいてきた
壺井 栄 / 二十四の瞳 amazon
車道は台風一過のように、渋滞なく各車のスピードをのせている。
丹羽 文雄 / 顔 (1963年) amazon
漁船がてんぷくして、鯨の背のような船底を見せている
壺井 栄 / 二十四の瞳 amazon
翼全体から銃火を噴いた飛行機が翼で殴りつけるような超低空で過ぎた。
石原 慎太郎 / 行為と死 (1967年) amazon
船は、真黒い岩か何かのように、そこにどっしりしていた。
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
車輪のスポークは異様に進化した獣の歯のように、闇の中に不吉な光を放っていた。
村上 春樹 / 回転木馬のデッド・ヒート amazon
とぶ鳥のかげのようにすぎた。
壺井 栄 / 二十四の瞳 amazon
遠く弓なりに百足のような汽車が見え出す。
志賀 直哉 / 暗夜行路 amazon
はるかに水平線に浮かんだ艦隊のように、トラック隊がやって来るのが見えた。
火野 葦平 / 麦と兵隊 amazon
一見するとアパート風の建物のようで船とも見えなかった。
牧野 信一 / 淡雪 amazon
隼(はやぶさ)のような早い飛行機
志賀 直哉 / 暗夜行路 amazon
デッキの上でバタバタと、その(帆布の)切れっ端が洗濯したおしめのように振れていた。
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
江戸川の水を往復する通運丸の牛が吼えるような汽笛も身に沁みて
長塚 節 / 土 amazon
石垣にぴッたりと糊付けか何かのようにくッ付いて、薄暗く油煙に汚れた赤い灯の点いている小さな舟
上司 小剣 / 鱧の皮 amazon
小さな箱のような電車
佐多 稲子 / くれない amazon
特別急行列車は満員のまま全速力で馳せていた。沿線の小駅は石のように黙殺された。
横光 利一 / 頭ならびに腹 amazon
白い波頭の上に海鳥のように身体をゆすっている。
林 房雄 / 青年 (1964年) amazon
大河の心臓の音のように、川蒸気の音が聞えて来る。
岡本 かの子 / やがて五月に (1956年) amazon
そのマストの下の方には、桟橋に流れかかったぼろ布のように帆布が、まといついていた。
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
終電車はもうとうに終わっている。駅舎もホームも照明が落とされて暗い。駅周辺の商店も、住宅も、明かりの漏れている建物は少なく、林や畑はもとより夜の闇そのものみたいに真っ暗、というか真っ黒に映る。 そのなかをまばらな街灯が繫いで示す道は細く頼りなく曲がりくねり、今は寝静まっているこの街の人々の住まいと住まいを結びながら闇に突っ込んだように途絶えたり、明るいオレンジ色の街灯とともに北側を太く力強く走る国道に届いたりした。 その国道こそ時折トラックなどが走ってきて去っていき、動きの乏しいこの町の夜景が、時間の止まった静止画ではないことを気づかせてもくれるのだったが、南側の畑が広がる間の細い道路を移動する自動車の光があると、むしろ時間と空間を超え来た物体を夜空に見ているような錯覚に陥った。
滝口 悠生 / 死んでいない者 amazon
車両の自動ドアが開くところだった。ぷしゅう、と空気が漏れる音がする。
伊坂 幸太郎 / ラッシュライフ amazon
パンダみたいな白黒のパトカー
あさの あつこ「ガールズ・ブルー (文春文庫)」に収録 amazon
巨大な棺桶のようなグレイハウンド・バス
村上春樹「風の歌を聴け (講談社文庫)」に収録 amazon
時速八〇キロの世界で走りだすとなんともいえない爽快感を覚えた。風のノイズに上半身を包まれ、彼は自分自身が凧にでもなったかのような気がした。
羽田 圭介「ミート・ザ・ビート (文春文庫)」に収録 amazon
スロットルを捻っては戻し捻っては戻し、甲高く馬鹿デカいエンジン音で威嚇する様は虫か何かのようだ。
羽田 圭介「ミート・ザ・ビート (文春文庫)」に収録 amazon
熟れすぎたトマトのようにつぶれてしまった筋肉
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
RV車が飛び出してくるのを雪子は確認した。左手の小さな小道から、それこそ示し合わせたように、出現した。巨大猪のような顔に見えた。野蛮な図体が雪子の運転する車に向かってきた。
伊坂 幸太郎「陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)」に収録 amazon
あくびでもするかのように間の抜けた汽笛をば太く鈍く響かせるばかり
永井荷風 / ふらんす物語 amazon
足の底から鉄槌で打ち上げてくるような硬い音が、車両を包み込んだ
高樹のぶ子 / その細き道(追い風) amazon
機関車は永いこと、呟いたり、ため息したり、歯軋りしてから、郊外の平凡な田園の中へ旅立った
三島由紀夫 / 真夏の死 amazon
汽笛は、---花野のひとひを笛のような音を立てて逃れてゆく秋嵐のように思われた
三島由紀夫 / 花ざかりの森 amazon
拳銃みたいなノズルを給油口に差し込んで、金色の液体をドクドク注ぐ、メーターがカタカタ変わっていく
美元怜一 / 就職戦線異状なし amazon
交差点にひしめき合う車の群れは、パニックに襲われた野鼠のように甲高い悲鳴を上げながら
柴田翔 / われら戦友たち amazon
この家を目指してくるような轟きで、ごおっと国電が何事もなく行きかう
幸田文 / 流れる amazon
地下鉄の、オルガンの低音を押さえ続けているような低い震動音
高樹のぶ子 / その細き道 amazon
ツーサイクル独特の不規則な、はりつめた皮の太鼓の上に豆をばらばらと撒き落としたような排気音
関川夏央 / ソウルの練習問題 amazon
電車はブレーキの余韻を残して停車し、大きなため息をついたかと思うと扉を開きました
原田宗典 / しょうがない人 amazon
二速三速でキュイーンとエンジンの回転数を上げているときの麻薬的快感
村上春樹 / 遠い太鼓 amazon
灰色の雲の中をB29が鈍い眠い音をたてて、何時までも飛んでいた
遠藤周作 / 海と毒薬 amazon
バイクがやたら多くて、ほとんどマフラーがついていないようなヤクザなバイクなのだ。そういうのが朝から晩までバタバタバタバタバタバタバタという、子供がトタン屋根を棒きれで思い切り叩いて回るようなけたたましい音を立てて島を走り回っている。
村上春樹 / 遠い太鼓 amazon
パトカーや救急車のサイレンが近づき、周囲は騒音の渦となった
連城三紀彦 / 恋文(ピエロ) amazon
病人の歯軋りのようなレールの軋り
三島由紀夫 / 花ざかりの森 amazon
フットブレーキを踏むたびに小型のニワトリを絞め殺しているような悲痛な音がする
村上春樹 / 遠い太鼓 amazon
列車が尻をぶっ叩かれた馬のようにあえぐ
小島信夫 / 汽車の中「新潮日本文学 54 小島信夫集」に収録 amazon
ロマンスカーがオルゴールのような明るい警笛をひびかせて通る
阿部昭 / 阿部昭集〈第4巻〉(子供の墓) amazon
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