眠っていたあいだになんだかひどく年をとってしまったような気がした。

四時間以上寝るのは贅沢（ぜいたく）の沙汰だって朝暗いうちから起きてくる

（目を開ける）眼をあけると、瞼（まぶた）に弾力がなくて、扇子をたたむようにくぼんで行く。

時計の針はもう十時をまわっている。昼に近い朝の光が、針で刺すように目の奥を痛めた。

毎朝床離れが辛かった。十分眠った筈なのに、目が醒めても筋肉が弛緩（しかん）しているのを感じ、背中がベッドに貼りついたように起き上り難い。

寝ている宇野浩二の真似でもしてみようかと思うけれども、ふとっているので、すぐ、両肘（りょうひじ）がしびれて来るに違いない。

（抱き抱えた幼児は）ずしりと重くなり、眠ってしまったのが分る。

雷（らい）の如き鼾声（かんせい）を放って熟睡

（午後の穏やかな日差しが射す部屋で、）長椅子の上に横たわった。 　彼女の両手は組合わされて頭の下にあった。その下にクッションがかさなって柔かく心持よく押しつけられている。肱かけの部分が高いので、長椅子は彼女の眼のところに程よい陰翳を与えた。暖かい……室内は絶対に物音せず、わずかに、開いた窓から気にならない程度に市街のどよめきが流れて来る……神経を撫で和らげられるので、伸子は眠いようになった。

眠気は海底地震によって生じた無音の波のように僕のボートを鈍く揺さぶっていた。