あざみさんが踊りだすとまわりの空気も表情も切り替わるので、私もいつもながらはっとした。あざみさんが動くごとにたくさんの花が見えるようだった。香りもしてくるし、その量も形もめくるめく勢いとそして不思議なゆるやかさで伝わってくる。 その裸足の足は床をなでるように動いてゆく。
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フラダンス
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前後の文章を含んだ引用
......ね?」 マサコさんは言って、ステレオに向かって行き、CDを選ぶと大きな音で音楽をかけはじめた。 すぐにイントロが始まり、あざみさんは着替えもせずに踊り始めた。 あざみさんが踊りだすとまわりの空気も表情も切り替わるので、私もいつもながらはっとした。あざみさんが動くごとにたくさんの花が見えるようだった。香りもしてくるし、その量も形もめくるめく勢いとそして不思議なゆるやかさで伝わってくる。 その裸足の足は床をなでるように動いてゆく。 ふっと気づいた。 マサコさんの家の壁にはたくさんの家族の写真がきれいなフレームに入って飾られている、小さい頃のあざみさんもいる。おかっぱで内気そうでかわいらし......
単語の意味
目眩く(めくるめく)
目眩く・・・目がくらむ。めまいがする。あまりに素敵で理性を失う。
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フラダンスの表現・描写・類語(動作・仕草・クセのカテゴリ)の一覧 ランダム5
(フラダンス)複雑なステップを踏んで、ゆっくりと回転し、パウスカートのすそがひらっと空間をなでた。風の吹くような優雅さであざみさんは手を右から左へと波打たせていた。
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(フラダンサーは)病室でも踊っていた。最後の日のパパはそれをうっとりと見ていた。天女を見るみたいな目で。
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(フラダンサー)踊りが終わったら、マサコさんは感情でいっぱいの、日常を生きている人間に戻ってしまうが、今は時を超えて存在している永遠の命、踊りの精なのだ。
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(フラダンス)それに、ステージの上のあざみさんはだれよりも輝いていた。 長い髪の毛が生き物のように揺れ、スカートがきちんとリズムを刻んで、顔はうっとりと優しく微笑み、肌はぴかぴかに黒かった。裸足の足が床に触れるごとに世界が喜んでいるのがわかった。ああ、世界は今彼女を愛している。そして彼女も大きな美しさを世界に返している、そう思った。 その交歓は官能的ではあったが、全く 淫靡 ではなかった。 まるで花が性器であるその部分を太陽に向かって大きく開いてその香りや色で人びとや虫たちを幸せにしているような感じだった。生まれてきたこと、今、この世に存在することの歓びがあふれていた。それは一方的なものでなくて、世界も彼女がいることを喜んでいるのだった。踊りという言葉でそれは空間に広がって、また戻ってくる。その光に私は魅せられた。 ああ、こういうのが恋っていうんだ。世界も彼女に恋をしているけれど、彼女を欲しがってはいない、そう感じた。それなのに彼女は全身が蜜みたいに甘くしっとり濡れている。世界は彼女を見たがっている。
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「動作・仕草・クセ」カテゴリからランダム5
着物も袴(はかま)も、野分の風にあたった芭蕉の葉のように切り裂かれる
海音寺 潮五郎 / 武道伝来記 amazon
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