（暗い窓ガラス）暗い窓ガラスが鏡のように自分の姿を映した。《…略…》窓に近づくと、 暗闇 でしかなかった窓の奥に、白い一点の光が浮かびあがった。さらに近づくと、その空間は画廊であり、光のように見えた点は絵画の一部だとわかった。窓ガラスに鼻が触れるほど顔を寄せて内部をのぞく。徐々に眼が暗闇になれ焦点が合ってくる。

磨りガラスの嵌った四角い窓から、内部の白い光が漏れている。

切り取ったような四角の窓

縁側の硝子戸の一部が、軒先に立てかけてある戸外食卓の天幕（テント）の加減で、鏡のように室内の一部を映して

わが家の黒門は、固くしまって扉に打った鉄鋲（てつびょう）が魔物のように睨んでいた。

残暑の 陽ひ が流れこむ二階の病室

車内が明るく外が暗いせいで、景色が見たいのに自分の顔ばかり映ってしまう窓ガラスにぎりぎりまで顔を寄せ

博物館のひっそりした海底のように暗鬱な廊下

卵色をした店先の明かり

それは五月のことで、新緑が芽吹いて明るい緑色が庭を覆っていた。