風は止んだ。多摩川の川づらには狭霧 が立ち籠 め生あたたかくたそがれて来た。
岡本かの子 / 雛妓 ページ位置:62% 作品を確認(青空文庫)
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霧・かすみ・もや
無風・風がない
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前後の文章を含んだ引用
......妹は、たまさか姉に遇 うても涙よりしか懐かしさを語り得ないような内気な娘であった。生よりも死の床を幾倍か身に相応 わしいものに思い做 して、うれしそうに病み死んだ。 風は止んだ。多摩川の川づらには狭霧 が立ち籠 め生あたたかくたそがれて来た。ほろほろと散る墓畔の桜。わたくしは逸作の腕に支えられながら、弟の医者にちょっと脈を検められ、「生きの身の」と、歌の頭字の五文字を胸に思い泛 べただけで急いで帰宅の......
単語の意味
立ち込める・立ち籠める(たちこめる)
狭霧(さぎり)
黄昏る(たそがれる)
立ち込める・立ち籠める・・・煙や霧などの気体が、あたり一面を覆う。
狭霧・・・霧のこと。
黄昏る・・・外を見てぼうっとする。一人で景色を眺めながら、物思いにふける。
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霧・かすみ・もやの表現・描写・類語(雨・霧のカテゴリ)の一覧 ランダム5
濃霧は松明の光りをその中にぼかしながら
横光利一 / 日輪
長い時間霧を見ていた。そうしているとおしまいには、乳白色の水滴の一粒一粒が見えてくるようになった。
小川 洋子 / 夕暮れの給食室と雨のプール「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
風が霧の流れを幕のようにはためかせて傍若無人に吹きちぎっていく。
石坂 洋次郎 / 山のかなたに amazon
薄い海霧 が一面に――然 しそうでないと云われれば、そうとも思われる程、淡くかかった。
小林多喜二 / 蟹工船
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無風・風がないの表現・描写・類語(風のカテゴリ)の一覧 ランダム5
風の死んだ、むっとするほど静かな夕暮
林房雄 / 恐怖の花(双生真珠) amazon
空気は透明でそよりともしない。
宮本百合子 / 伸子
風なんてぴくりとも吹いてはいなかった
村上春樹 / ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon
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「雨・霧」カテゴリからランダム5
さっきまでの青空に、不吉なほどに黒々とした雨雲が波のように押し寄せてきたかと思うと、蛇口を捻ったかのような唐突さで、雨が降りはじめた。
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
うすいこの頃の牛乳みたいな、朝もや
サトウ ハチロー / 青春風物詩「青春風物詩―ハチロー半生記 (1952年) (ユーモア小説全集〈第3〉)」に収録 amazon
(風が吹くと)樹 々 は身震いをして雨滴をおとします。
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
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耳元でぐるぐる 捩れながら吹きすぎていく風の音
宮本 輝「道頓堀川(新潮文庫)」に収録 amazon
じっと耳を澄ましているとほんのわずかの風の切れめから女の声らしきものがちらりと聞こえたような気がしたが、それもあるいは僕の錯覚かもしれなかった。
村上春樹 / ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ風の音強風・暴風よく聞こえない・不明瞭な音
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