とうもろこしは、一本で平均十六列、一列の粒数約三十五粒である。（粒の総数は必ず偶数だそうだ）

しめった唐もろこしの茶色のひげの中から、ぞうげ色の粒々が行列して出て来る。

（とうもろこしは）几帳面な性格である。 　とうもろこしの粒は、縦一列に整然と、まっすぐに並んでいる。 　しかも、一分の隙間もなく、誠実に芯の表面を覆いつくしている。 　昔のとうもろこしは、ところどころに空き地があったが、最近のは例外なくびっしりと隙間なく並んでいる。 　その過密性は建売住宅を思わせる。 　土地の有効利用を考えなくてはならない時代性を、とうもろこしなりに考えているのかもしれない。

トウキビのおいしさは粒を噛み切った時に出てくる甘い汁。ゆっくり噛むとこの甘さがさらに膨らんでくる。

嚙みしめると、まず皮の感触があり、その次に穀物とは思えない野菜のような甘味が味わえ、最後に中心部の白っぽい芯の、穀物としての味が残る。 　一粒で三種類の味を味わうことができるのである。

野菜はありあわせのキャベツ、ピーマン、インゲンなどで、味つけは塩だけ、生姜でアクセントをつける。

なんという香りの高いおいしい漬物

茄子紺と呼ばれる暗い紫色と膨らみ損ねた風船みたいな形がどうにも不気味

キャベツの芯を味噌漬けすると、カリカリして意外なおいしさ

ほろ苦い春の味覚