ビルの下のゴーゴー言ってる国道の車の音

車重を支えたタイヤが砂利を踏みながら進み、押しつぶされた砂利同士が擦れあい鈍い音が鳴る。やがて後輪まで車道に出るとその音は止み、真新しいアスファルトとタイヤのたてる静かな摩擦音が時速数十キロの速さでどんどん彼から離れていった。

車はトンネルの中に入ると、風を切る音が変わった

闇をつんざきつつ、五台の自動車が、無言のまま物の怪に憑かれたように疾走する

急な坂道で車の息も荒くなる

煤が鱗粉のように降りかかる

その柱はひどくグラグラしていて天井から砂埃が二人の襟足に雲脂（ふけ）のように降りかかって来た。

埃（ほこり）がして、まるで夕焼みたいな空。

砂埃は黒煙のように街に漲った

煙幕のように埃が立つ

湯気が屏風（びょうぶ）のように立騰って

足裏をかわるがわる持ちあげて丹念に圧す。土踏まずや、 踵 や、指の付け根や、圧される場所によって異なった種類の快感が生じて、その快感が身体のもっと上の方のそれぞれ異なった部分に火を点ける。親指の下の膨らみを揉まれると、乳首が矢尻のように尖る。片方の足を皮膚の粗い両手がさやのように包んで撫でさすると、最初の声が漏れる。

吸い込まれるように転落していく

市に出された 驢馬ろば のように信徒たちは、一列に並ばされた。

まるで蛸が自分の足を喰うような話で、穴を埋めながら他方にまた新しい穴をあけているのですが、当座のやりくりだけはつく、そういう方法です。

道路は自動車がひしめき合い、よたよたと行ったり来たりしている

フットブレーキを踏むたびに小型のニワトリを絞め殺しているような悲痛な音がする

終電車はもうとうに終わっている。駅舎もホームも照明が落とされて暗い。駅周辺の商店も、住宅も、明かりの漏れている建物は少なく、林や畑はもとより夜の闇そのものみたいに真っ暗、というか真っ黒に映る。 　そのなかをまばらな街灯が繫いで示す道は細く頼りなく曲がりくねり、今は寝静まっているこの街の人々の住まいと住まいを結びながら闇に突っ込んだように途絶えたり、明るいオレンジ色の街灯とともに北側を太く力強く走る国道に届いたりした。 　その国道こそ時折トラックなどが走ってきて去っていき、動きの乏しいこの町の夜景が、時間の止まった静止画ではないことを気づかせてもくれるのだったが、南側の畑が広がる間の細い道路を移動する自動車の光があると、むしろ時間と空間を超え来た物体を夜空に見ているような錯覚に陥った。

街の灯りを頬に流しながら、風人は言った。

埠頭に並んでいる巨大なガントリーグレーンの列も、夢の地平線上に立ったまま死んだキリンの骸骨の列のようだ。