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街並みが薄赤い炎に包まれて音もなく燃え上がるのが見える。炎は石段の下あたりから視界の 彼方 までを一瞬でのみ込んだようだ。屋根瓦や電柱や看板が一面に燃えながら透き通っていく。全部のビルの屋上から高々と火柱が上がる。まるで天上の風景のように美しいと十和子は思う。果てしない砂漠を覆い尽くして、タマリスクの赤紫色の花がいっせいに開いたよう。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 ページ位置:94% 作品を確認(amazon)
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夕焼け
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前後の文章を含んだ引用
......滅しはじめているが、まだ昼の光が残っている。光も闇もチャイナ・ブルーの青に溶け合ってしまう時間だ。水島が最初の一段を下りたとき、こちらに背を向けたその肩越しに、街並みが薄赤い炎に包まれて音もなく燃え上がるのが見える。炎は石段の下あたりから視界の彼方までを一瞬でのみ込んだようだ。屋根瓦や電柱や看板が一面に燃えながら透き通っていく。全部のビルの屋上から高々と火柱が上がる。まるで天上の風景のように美しいと十和子は思う。果てしない砂漠を覆い尽くして、タマリスクの赤紫色の花がいっせいに開いたよう。 決心は知らぬまにできている。これが望んでいたことだという深い納得がある。我ながら呆れてしまう。自分自身の本心になぜもっとはやく気付かなかったのか? ナイフの柄......
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風景(ふうけい)
風景・・・自然の景色。目の前に広がる眺め。その場の情景。
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沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
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