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夕餉ゆうげ の香りが河畔のあちこちから漂ってくるころ
宮本 輝 / 泥の河「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 ページ位置:34% 作品を確認(amazon)
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夕方
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......きはよそ見せんと食べなはれ」 しきりに対岸を見つめている信雄の手を、貞子がいきなり叩いた。 夕陽の、赤錆のようなかけらが、少しずつ黒ずみながら川面を昇っていた。夕餉の香りが河畔のあちこちから漂ってくるころ、姉弟は舟から出て来て遊び始めるのである。その姿は対岸の信雄の家からも垣間見ることができた。暮れなずむ道端にしゃがみ込んで、何やら遊んでいるらしい喜一と銀子の姿......
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