山脈は低くなり丘と谷が 錯綜 して来た。 磯波いそなみ のようにまくれ返った頂上を並べた低い丘が、海岸方面に連り、道はその裏側を 廻った。

白雲を棚曳（たなび）かせた連山

夕日を照りかえしてどこまでも続く山脈

薄墨で掃いたようななだらかな連山

何といっても浅間の美しさは限りなかった。美しいというよりは、いっそなまめかしい。怠惰な裸女の寝姿のようだった。

人の頭と頭の間に見え隠れする、男の背中を追う。

北斎にいたっては、その頂角、ほとんど三十度くらい、エッフェル鉄塔のような富士をさえ描いている。

（タクラマカン砂漠）あそこの砂はパウダー状で軽くて実体がなくて、それがもう四方八方見渡す限りどこまでも広がってる。自分の身体なんてあっという間に砂に同化して風に飛ばされてしまいそうな気がするんだ。あの砂漠では誰でも死について考えてしまう。というより、皮膚がひりひりするくらいに直接死を感じてしまうんだ。絶対零度の孤独って吐き気にちょっと似てるよね――

（奈良の）西日にてらされた眼下の街が、鮮やかに、古代の金の都市が浮かび上がってきたみたいにうっとりと横たわっていました。