等は時折どんなにじっと見つめていてもそこにいない気がした。眠っていても、私はどうしてか何度も心臓に耳をあてずにはいられなかった。笑顔があまりにもぱっと輝くと思わず瞳をこらして見てしまった。彼はいつもその雰囲気や表情にある種の透明感を持っていた。だから、こんなにはかなく心もとなく感じるのだろう
吉本 ばなな / ムーンライト・シャドウ「キッチン (角川文庫)」に収録 ページ位置:3% 作品を確認(amazon)
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儚げな人
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前後の文章を含んだ引用
......離れない、愛しい、愛しい音だ。 そんな気がしたなんて、後からいくらでも言える乙女の感傷だ。しかし私は言う。そんな気がしました。 いつも心から不思議に思っていた。等は時折どんなにじっと見つめていてもそこにいない気がした。眠っていても、私はどうしてか何度も心臓に耳をあてずにはいられなかった。笑顔があまりにもぱっと輝くと思わず瞳をこらして見てしまった。彼はいつもその雰囲気や表情にある種の透明感を持っていた。だから、こんなにはかなく心もとなく感じるのだろうと私はずっと思っていたが、もしそれが予感だったとしたらなんと切ないことであろうか。 恋人を亡くしたのは長い人生、と言っても二十年やそこらだが、のうちで初めての体......
単語の意味
心許ない(こころもとない)
笑顔(えがお)
心許ない・・・頼りにならなそうで不安。心配。
笑顔・・・笑っている顔。笑みを含んだ顔。にこにこ顔。
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このひとの中にはたしかに大きな苦しみがあるのだ。そしてその苦しみがこの小さな女を圧倒しおしつぶそうとしているのだ。
野間 宏 / 顔の中の赤い月「暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
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髪の黒さと唇の紅さが、顔の青白さを引き立て、ベッドの少女は周りの白さの中に今にも消えてしまいそうなほど、儚げだった。
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