水のにおいは、夏が近づくにつれ濃くなっていく。 いや、田んぼのにおいかもしれない。甘酸っぱくて、しっとりした重みのある、いつまでも嗅いでいたくなるようなにおいだ。街では、こういうにおいに気づいたことがない。栄養分たっぷりの土と若い緑に、澄んだ水が触れてはじめて生まれるにおいだ。
三浦 しをん「神去なあなあ日常 (徳間文庫)」に収録 ページ位置:39% 作品を確認(amazon)
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田園・田畑
夏
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前後の文章を含んだ引用
......んを見上げた。「この村は、美人の産地なんですか?」「いやだよう、この子は」 繁ばあちゃんは「ふぇっ、ふぇっ」と笑い、俺の額を掌ではたいた。 三章 夏は情熱 水のにおいは、夏が近づくにつれ濃くなっていく。 いや、田んぼのにおいかもしれない。甘酸っぱくて、しっとりした重みのある、いつまでも嗅いでいたくなるようなにおいだ。街では、こういうにおいに気づいたことがない。栄養分たっぷりの土と若い緑に、澄んだ水が触れてはじめて生まれるにおいだ。 俺は濡れ縁にあぐらをかき、暗い表を眺めていた。細く降っていた雨は上がったようだ。かたわらでは、みきさんが火をつけてくれた蚊取り線香が白い煙を立ちのぼらせている......
単語の意味
土(つち)
土・・・岩石と有機物が混じって細かい粉末状になったもの。有機物は、生物の死骸およびその腐敗物、微生物などから構成されている。砂(有機物が含まれない)とは違い、植物が育ちやすい。
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田圃(たんぼ)の真ん中に、まるで蜃気楼のように出現したマンモス団地
後藤 明生 / 挾み撃ち amazon
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夏の表現・描写・類語(夏のカテゴリ)の一覧 ランダム5
一ふきの風も動かぬ、もーっと水蒸気のかかった八月の暑さ
宮本百合子 / 伸子
やわらかな新緑に体ごと染まってしまいそうな初夏
竹西寛子 / ひとつとや amazon
夏の海が銀紙を貼り付けたように鈍く、そのくせ眼底までくらませるような強い光を跳ね返してくる
阿久悠 / 瀬戸内少年野球団 amazon
夏になるにしたがって、町そのものが障子を取り外したようになる
佐多稲子 / 素足の娘 amazon
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遠くに低い丘陵のうねりが見える。
阿刀田 高 / 捩れた夜「ナポレオン狂 (講談社文庫)」に収録 amazon
断崖は、うちたてた屏風のように海に乗り出して
堀田 善衛 / 鬼無鬼島 amazon
「夏」カテゴリからランダム5
夏になるにしたがって、町そのものが障子を取り外したようになる
佐多稲子 / 素足の娘 amazon
天地が灼熱に溶けて、静寂極まった自然が夢や幻になったのではあるまいか。
岡本かの子 / 河明り
このまま野球場に行って生ビールを飲みたくなるような、気持ちの良い晩夏の夕暮れだ。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
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