窓の外から波止めで砕ける波の音が聞こえた。夜になると波の音は高くなる。波の音は夜通し聞こえ、小さなベッドで眠る祐一のからだを浸していく。 そんなとき、祐一は波打ち際の流木のような気持ちになる。波に攫われそうで攫われず、砂浜に打ち上げられそうで打ち上げられない。いつまでもいつまでも、流木は砂の上を転がされ続ける。
吉田修一「悪人」に収録 ページ位置:42% 作品を確認(amazon)
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就寝前に聞こえる音
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......っかぁ。いい所に住んどるとねー〉〈別にいい所じゃなかよ〉〈でも海の近くやろ?〉〈海なら、すぐそこにある〉〈海なら、すぐそこにある〉と打ったメールを送ったとたん、窓の外から波止めで砕ける波の音が聞こえた。夜になると波の音は高くなる。波の音は夜通し聞こえ、小さなベッドで眠る祐一のからだを浸していく。 そんなとき、祐一は波打ち際の流木のような気持ちになる。波に攫われそうで攫われず、砂浜に打ち上げられそうで打ち上げられない。いつまでもいつまでも、流木は砂の上を転がされ続ける。〈佐賀にもある? 奇麗な灯台〉 すぐに送られてきたメールに、〈あるばい。佐賀にも〉と祐一は送り返した。〈でも唐津のほうやろ? うち市内のほうやけん〉 送られてく......
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かすかなかすかな声が遠くの遠くから聞えました。
宮沢賢治 / ひかりの素足
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彼は心を静め、目を閉じて眠りについた。意識の最後尾の明かりが、遠ざかっていく最終の特急列車のように、徐々にスピードを増しながら小さくなり、夜の奥に吸い込まれて消えた。
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
スイッチをOFFにしたような眠り
吉本ばなな / 白河夜船 amazon
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