くさむらが風の通り跡を印して穂先を倒し、けもののように動いていた。及川隆一の視線が、その獣の背中の毛のようにきらめく雑草の拡がりから、何か不可解な動揺を、彼の脳髄につたえる。草むらは次々と穂先をひるがえして、波を送る。
野間 宏 / 崩解感覚「暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)」に収録 ページ位置:70% 作品を確認(amazon)
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草木のざわめき
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前後の文章を含んだ引用
......きた。と彼の心が、またもやかすかにおののいてくる。《愛してはいないんだからな……俺も志津子を愛してはいないし、志津子も俺を愛してはいないんだからな……》 右手のくさむらが風の通り跡を印して穂先を倒し、けもののように動いていた。及川隆一の視線が、その獣の背中の毛のようにきらめく雑草の拡がりから、何か不可解な動揺を、彼の脳髄につたえる。草むらは次々と穂先をひるがえして、波を送る。と、彼の視覚が、少しずつはぎとられて行くような、彼の神経の一部が裏がえしにされるような、感じがおこってくる。頸筋の辺りにその裏返しにされた自分の神経がうす寒い風......
単語の意味
煌く・煌めく・燦めく(きらめく)
翻す(ひるがえす)
視線(しせん)
背中(せなか)
煌く・煌めく・燦めく・・・キラキラと光り輝く。存在が輝かしくて人目をひく。
視線・・・目と、目が見ようとしているモノとを結ぶ線。目が見ている方向。見つめている方向。
背中・・・背の中央。背骨のあたり。動物の胴体の背骨のある側。胸や腹と反対の面で、両肩の間から腰のあたりまでの部分。背(せ)。背面。
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草木のざわめきの表現・描写・類語(音の響きのカテゴリ)の一覧 ランダム5
その葉がチラチラ光ってゆすれ互いにぶっつかり合って微妙な音をたてるのでした。
宮沢賢治 / ひかりの素足
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「音の響き」カテゴリからランダム5
雑多なざわめきの音が、閉じ込められた暗い校内に海鳴りのように遠く近く響いていた。
吉本 ばなな / TUGUMI(つぐみ) amazon
こうした言葉を鼓膜にピンピンと受け付けながら
夢野久作 / ドグラ・マグラ
「植物」カテゴリからランダム5
木の枝のしなう音が、人間の呼吸みたいに強弱となって繰り返される
富岡 多恵子 / 砂に風 amazon
濁った朝焼けの空を、樹々の梢がやたらにかきまわして騒ぐ
永井 龍男 / コチャバンバ行き amazon
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