(古びた診療所)座っているだけで気分がふさいでくるような、古びた診療所だった。天井はくすみ、スリッパは垢が染みてぺたぺたし、壁に張られた離乳食教室や予防注射の案内はどれも黄ばんでいた。レントゲン室のランプだけが、ぼんやりと私たちを照らしていた。
小川洋子「博士の愛した数式 (新潮文庫)」に収録 ページ位置:37% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
粗末な建物
病院
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......す。助けてやって下さい。お願いします」 傷口は二針縫っただけでふさがった。私と博士は薄暗い廊下に腰掛け、腱が傷ついていないかどうかの検査が終わるのを待っていた。座っているだけで気分がふさいでくるような、古びた診療所だった。天井はくすみ、スリッパは垢が染みてぺたぺたし、壁に張られた離乳食教室や予防注射の案内はどれも黄ばんでいた。レントゲン室のランプだけが、ぼんやりと私たちを照らしていた。念のための検査という割には、ルートはなかなか診察室から出てこなかった。「君は、三角数を知っているかね」 レントゲン室のドアにある、放射線の危険か何かを示す三角の......
単語の意味
垢(あか)
垢・・・皮膚の上の、汗やほこり、脂が交じってできる汚れ。
ここに意味を表示
粗末な建物の表現・描写・類語(家・建物のカテゴリ)の一覧 ランダム5
眼下の部落を見おろしました。褐色の一握りの土塊のように 藁屋根 と藁屋根との集まった部落。泥と木とでねりあわせた小屋。
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
鉄の扉は何度も塗りなおされたあとで、あきらめて放り出されていた。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
青い雑草が壁の破れからつき出ている共同便所
野間 宏 / 崩解感覚「暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
土壁のないバラックで、昔は物置であったのかもしれない。
林芙美子 / 新版 放浪記
このカテゴリを全部見る
病院の表現・描写・類語(店・施設のカテゴリ)の一覧 ランダム5
(病院は古めかしい木造の建物で)病院特有の強い消毒液の匂いはなく、そのかわり汗と果実のまじりあったような臭気に満ちていた。
宮本 輝 / 螢川「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 amazon
このカテゴリを全部見る
「店・施設」カテゴリからランダム5
バーは薄暗がりのなか緊密で濃い夜の空気に満ちて、少ない客は緊密にはりめぐらされた雰囲気をほどかないように、そっと小声で話し合っていた。
綿矢 りさ / 亜美ちゃんは美人「かわいそうだね? (文春文庫)」に収録 amazon
美しいママが女の子やおばさんたちの先頭に立ち、きびきびと立ちはたらき、なごやかに客あつかいをしている。
池波 正太郎「食卓の情景 (新潮文庫)」に収録 amazon
目を閉じるとカップとソーサーがかたかたとふれ合う音が遠い潮騒みたいに聞こえた。
村上春樹「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」に収録 amazon
ほうきの目が見えるほど綺麗に掃除が行きとどいた境内
山本 有三 / 波 amazon
「病院」カテゴリからランダム5
病院の窓々にはうるんだ灯がともり、港にはいる満艦飾の船のように見えた
遠藤 周作 / 海と毒薬 amazon
(人体実験室)この四角い解放治療場の全体が、さながらに緑の波の中に据えられた巨大な魔術の箱みたように感じら
夢野久作 / ドグラ・マグラ
(チョコレート嚢胞の手術)指先でつまんで、口の中で溶かしたくなるような言葉だ。 しかし、メスの刃の下からあふれ出てきた液体は、言葉のかわいらしさとは正反対に、吐き捨てたくなるような不快な色をしている。血液が腐敗した色だ。ビニールの手袋の上にとろりと広がって、今までに溜め込んできた体温や体臭を一遍に放り出している。その傍で卵巣はすっかり萎びている。
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
妙に白っぽい病室の真っ白なベッド
あさの あつこ「ガールズ・ブルー (文春文庫)」に収録 amazon
「家・建物」カテゴリからランダム5
十二月の雨に濡れた三本脚の黒犬みたいに哀しげ(なホテル)
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
ビルとは名ばかりの、裏通りのモルタル二階建てで、下に家主の美容院
向田邦子 / 酸っぱい家族「思い出トランプ(新潮文庫)」に収録 amazon
同じカテゴリの表現一覧
店・施設 の表現の一覧
病院 の表現の一覧
家・建物 の表現の一覧
風景表現 大カテゴリ