夜、月が数々の葉末を剣のように光らした。空はそのあわいに 藍色 に澄んで、満月に近い月を、高く冷たく浮べていた。
昇平, 大岡「野火(のび) (新潮文庫)」に収録 ページ位置:23% 作品を確認(amazon)
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月の光・月明かり
木漏れ日
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前後の文章を含んだ引用
......来なかった。 葉扇は戛々と風に鳴った。私は根方の草に寝て眼をつぶり、その音だけを聞いていた。私は飢えを意識し、手に当る草を採ってその根を噛んだ。口中が痺れた。 夜、月が数々の葉末を剣のように光らした。空はそのあわいに藍色に澄んで、満月に近い月を、高く冷たく浮べていた。 私が命を断つべきは今と思われた。香わしい汁と甘い肉を持つ果実が頭上にあり、ここで私は徒らに飢えている。もし私がいつまでもここを去らないなら、やがて樹幹に醜くし......
単語の意味
藍色(あいいろ)
葉末(はずえ)
間(あわい)
満月(まんげつ)
剣(けん・つるぎ)
藍色・・・くすんだ青色。黒色がかった青色。藍(植物)で染めたような色で、ジーパンのような青。インディゴ。
葉末・・・葉の先端。葉の先っぽ。
間・・・あいだ。間隔。
満月・・・月が地球から見て、太陽と正反対の方向にある瞬間。また、このときに月の前面がまんまるに輝いて見える現象。もしくは、このときの月の形。望(ぼう)。望月(ぼうげつ・もちづき)。盈月(えいげつ)。十五夜の月。⇔ 新月(しんげつ)。
剣・・・刀剣のうち諸刃・両刃(もろは[=両側に刃がある])のもの。片刃のものは「刀(かたな)」という。
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水のような月の光を浴びて
長塚 節 / 土 amazon
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杉の葉から、太陽とも街灯ともつかない明るさが微かにこぼれ落ちてくるのが、見える。薄っすらと仄めくような、光線だった。
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon
急に青葉をくぐって、強い日の光が庭の一部に降りそそいで来た。明るいところと暗いところが、くっきりと分かたれて、青い焔を燃え立たせたように光の斑が散らばった。
大仏 次郎 / 宗方姉妹 (1954年) amazon
竹に交 った杉むらの空から、西日が一すじ落ちている
芥川龍之介 / 藪の中
茂みの隙間から射し込んだ朝日の縞
横光利一 / 日輪
木の間からチラチラと射 すいっぱいな日光の靨
吉川英治 / 銀河まつり
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玉を繋ぐ細い糸筋のような月の光
宮本 百合子 / 伸子 amazon
微かな月光が城下の街を、墨絵のように浮かばせる
菊池 寛 / 忠直卿行状記 amazon
氷のごとく澄める月影
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遠い山々が雪が煙ると見えるような柔らかい乳色につつまれる
川端 康成 / 雪国 amazon
曇空には雲が暗澹 と動いていた。
梶井基次郎 / 冬の日
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