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謙作 はその冬、初めての児を失い、前年とは 全 で 異 った心持で、この春を過して来た。都踊も八重桜も、去年はそのまま楽しめたが、この春はそれらの奥に何か不思議な淋しさのある事が感ぜられてならなかった。
直哉, 志賀「暗夜行路 (新潮文庫)」に収録 ページ位置:69% 作品を確認(amazon)
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喪失感(大切なものを失う)
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前後の文章を含んだ引用
......かった。僻みだ、そう想い直して見ても、彼は尚そんな気持から脱けきれなかった。 霊雲院は衣笠村からそう遠くなかったから、謙作はよく歩いてお参りをして来た。第四一 謙作はその冬、初めての児を失い、前年とは全で異った心持で、この春を過して来た。都踊も八重桜も、去年はそのまま楽しめたが、この春はそれらの奥に何か不思議な淋しさのある事が感ぜられてならなかった。 彼は今後に尚何人かの児を予想はしている。然しあの子供はもう永遠に還っては来ないと思うと、その実感で淋しくさせられるのだ。次の児が眼の前に現われて来れば、この感......
単語の意味
八重桜(やえざくら)
異(い)
八重桜・・・桜の一種。八重咲き(花びらが重なった状態で咲く)なので、一重咲き(花びらが重ならずに咲く)の桜よりも色が濃く美しい。咲く時期は他の桜より遅い。牡丹桜の別名。
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喪失感(大切なものを失う)の表現・描写・類語(悲しみのカテゴリ)の一覧 ランダム5
悲痛さは、日々そのかたちが曖昧になって、少しずつ、音もなく崩れていっているように感じられた。時の流れの中に 零れ落ちていって、少なくとも心は軽くなってゆきつつある。そのお陰で、自分が危機から遠ざかりつつある安堵を覚えてはいたが、死の直後の恐ろしい寂しさとはまた違った、ゆっくりと染み入るような寂しさを、時折、からだの深い奥で感じた。
平野啓一郎「ある男」に収録 amazon
家族という、確かにあったものが年月の中でひとりひとり減っていって、自分がひとりここにいるのだと、ふと思い出すと目の前にあるものがすべて、うそに見えてくる。
吉本 ばなな / キッチン「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon
(喪失感で色のない世界に見える)天候という言葉から見放された空。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
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「心」の言葉を含む悲しみの表現・描写・類語(悲しみのカテゴリ)の一覧 ランダム5
(悲しみの席で食べた寿司)心とはうらはらに、 頬 のとろけるような寿司の 旨 さが悲しかった。
浅田次郎 / 角筈にて「鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)」に収録 amazon
兎の眼のようなおじけづいた、心配そうな眼
小島信夫 / アメリカン・スクール amazon
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「悲しみ」カテゴリからランダム5
自分のひそかな絶望の形態が、竹矢来のように、自分の周囲に張りめぐらされた気がした。
林 芙美子 / 浮雲 amazon
「生と死」カテゴリからランダム5
K君と彼女がいなくなったら、自分はきっと泣くだろう、とわたしは思った。一緒にいる楽しさよりも、いないつらさでその人の大切さが胸にしみる時、わたしはその人を特別に愛することができる。
小川洋子 / 冷めない紅茶「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
食うものがあろうがなかろうが子供は芋の子のように出来て去年の暮れに八人目が生まれ
伊藤 永之介 / 鶯 (1956年) amazon
ネコの死骸そのものより、誰かが殺したという事実が怖い。そこにある意思や感覚が怖い。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー (文春文庫)」に収録 amazon
掌の雛を握りつぶしたのである。雛はかすかな絶叫をあげて死んだ。
宮本 輝 / 泥の河「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 amazon
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