ボールを 蹴る音や選手たちの怒鳴り声や、甲高いホイッスルの音や、耳元でぐるぐる 捩れながら吹きすぎていく風の音やらが、真冬の夕暮の 凛々 たる落日に包まれて、邦彦以外誰もいない観覧席全体を、逆に何か底知れぬ 静謐 で満たしていた
宮本 輝「道頓堀川(新潮文庫)」に収録 ページ位置:8% 作品を確認(amazon)
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静けさ・静寂
運動場
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前後の文章を含んだ引用
......あいを眺めている今の自分の姿を心に描こうとしてみた。すると、寒風の吹きすさぶ夕暮の競技場でサッカーの試合を観ていた二年前のことが、眼前にひろがってきたのだった。ボールを蹴る音や選手たちの怒鳴り声や、甲高いホイッスルの音や、耳元でぐるぐる捩れながら吹きすぎていく風の音やらが、真冬の夕暮の凛々たる落日に包まれて、邦彦以外誰もいない観覧席全体を、逆に何か底知れぬ静謐で満たしていたさまが思い出されてきたのである。 その日の午後から、入院中だった母の容態がおかしくなった。大晦日で、比較的軽症の人たちや、長期にわたって入院をつづけていて、しか......
単語の意味
凛凛・凛々(りんりん)
落日(らくじつ)
真冬(まふゆ)
耳元・耳許(みみもと)
凛凛・凛々・・・1.凛々(りり)しいさま。勇ましいさま。また、心の引き締まるさま。凜乎(りんこ)。凜然(りんぜん)。
2.寒さや緊張などで身が引き締まるさま。厳しく身にしみるさま。
同じ漢字を重ねることで、語調を整えて意味を強めた表現。
2.寒さや緊張などで身が引き締まるさま。厳しく身にしみるさま。
同じ漢字を重ねることで、語調を整えて意味を強めた表現。
落日・・・沈もうとしている太陽。入り日。落陽。落暉(らっき)。
真冬・・・冬の真っ最中。冬、一番寒い時期。
耳元・耳許・・・耳の根もと。耳のそば。耳のすぐ近く。耳許の「許」は、「近く」「そば」を意味する。
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草の芽の伸びる音さえ聞き取れそうにあたりは静か
大仏 次郎 / 雪崩 (1953年) amazon
声だけが空にふわふわ漂ったような静寂
本庄 陸男 / 石狩川 amazon
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楕円形 ですり鉢 状になった観覧席
宮本 輝「道頓堀川(新潮文庫)」に収録 amazon
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靴音のように遠くから規則正しく寄せてくるピアノのメロディー
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon
怖気 だつほど澄んだ音色
宮本 輝 / 螢川「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 amazon
朝の誰もいない広々とした食堂の中は恐ろしく深閑としていて
林芙美子 / 新版 放浪記
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キハ12は無人の北美寄駅に、お愛想のように止まった。
浅田次郎 / 鉄道員(ぽっぽや)「鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)」に収録 amazon
プールが午後の日射しに雲母をちりばめたように光っている
落合 恵子 / 夏草の女たち amazon
波止場には船がついたのか、低い雲の上に、船の煙がたなびいていた。汐風 が胸の中で大きくふくらむ。
林芙美子 / 新版 放浪記
ハンバーガーショップから、トマトケチャップと焦げた肉と清涼飲料水のにおいが混ざって漂ってくる。
小川洋子 / 揚羽蝶が壊れる時「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
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