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発作は長く続いた。天吾(人名)は目を閉じ、いつものようにハンカチを口にあて、しっかり噛みしめていた。どれくらいそれが続いたのかわからない。すべてが終わってしまってから、身体のくたびれ方で見当をつけるしかない。身体はひどく消耗していた。こんなに疲れたのは初めてだ。まぶたを開くことができるようになるまでに時間がかかった。意識は一刻も早い覚醒を求めていたが、筋肉や内臓のシステムがそれに抵抗していた。季節を間違えて、予定より早く目を覚ましてしまった冬眠動物のように。《…略…》天吾はようやく目を開け、焦点をあわせ、テーブルの縁を握っている自分の右手を眺めた。世界が分解されることなく存在し、自分がまだ自分としてそこにあることを確認した。しびれは少し残っているが、そこにあるのはたしかに自分の右手だった。汗の匂いもした。動物園の何かの動物の艦の前で嗅ぐような、奇妙に荒々しい匂いだ。しかしそれは疑いの余地なく、彼自身の発する匂いだった。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 作品を確認(amazon)
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我に返る・意識が戻る
発作
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単語の意味
身体(しんたい)
右手(みぎて)
身体・・・人のからだ。肉体。
右手・・・1.右の手。 ⇔ 左手(ひだりて)。
2.右の方向。右側。
2.右の方向。右側。
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我に返る・意識が戻るの表現・描写・類語(思考・頭の中の状態のカテゴリ)の一覧 ランダム5
我に返って周囲を見渡す
山田詠美「新装版 ハーレムワールド (講談社文庫)」に収録 amazon
憑いていた狐が落ちたように自分のしてきたことが阿呆らしくなる
大仏 次郎 / 冬の紳士 amazon
わたしは自分を引き戻すように、紅茶の最後の一口を飲み干した。
小川洋子 / 冷めない紅茶「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
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発作の表現・描写・類語(健康・体調・病気のカテゴリ)の一覧 ランダム5
突然、利明の心臓が大きな音をたてた。規則的な鼓動の中に割り込んだ感じだった。息苦しさを覚え、利明は胸に手を当てた。どくん。利明の自律神経に逆らうかのように、心臓は再び身勝手な一拍を返してきた。全身が熱くなるのがわかった。
瀬名 秀明 / パラサイト・イヴ amazon
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もっともそれは誰がどう眺めまわしても苦労といった類いのものではなかった。メロンが野菜に見えないのと同じことだ。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
(テレビ鑑賞に)食事と晩酌の時間を最低限当てる。まるで画面から味でもするみたいに吸いついて飽きもせず眺めている。
本谷 有希子 / 異類婚姻譚 amazon
「健康・体調・病気」カテゴリからランダム5
父親が枯れ枝のように衰えていく
重松 清「流星ワゴン (講談社文庫)」に収録 amazon
コロロホルムの酢のような匂い
林芙美子 / 新版 放浪記
百パーセント健康な人なんて、いやしない。
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon
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