外には冬の闇が満ちていた。どこか甘い匂いがするような、しっとりした闇だった。掌を広げると、闇のベールの感触がつかめそうだった。
小川洋子 / 冷めない紅茶「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 ページ位置:96% 作品を確認(amazon)
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暗い・闇
冬の夕方・夜
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前後の文章を含んだ引用
......K君の視線の先にあるものを一緒に見ようとして、彼の瞳に目をやった。 夜になっても彼女は帰ってこなかったので、わたしはK君にありがとうとさよならを言って家を出た。外には冬の闇が満ちていた。どこか甘い匂いがするような、しっとりした闇だった。掌を広げると、闇のベールの感触がつかめそうだった。 空気は冷たかったが、寒くはなかった。空の高い所で、星が小さく光っていた。わたしは、頬や手首やふくらはぎが、冷気にゆっくり包まれてゆくのを感じながら歩いた。太っ......
単語の意味
ベール
手の平・掌(てのひら)
手の平・掌・・・手首から先の、物を握ったときに内側になる面。掌(たなごころ)。
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暗い・闇の表現・描写・類語(光と影のカテゴリ)の一覧 ランダム5
あたりは墨を落したように暗かった。
檀一雄 / 花筐「花筐・光る道 他四編」に収録 amazon
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冬の夕方・夜の表現・描写・類語(冬のカテゴリ)の一覧 ランダム5
風が澄んだ音をたてて凍りつくような、冷たい夜だった。
小川洋子 / 冷めない紅茶「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
金星が寒い夕空に光っていた。
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon
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「光と影」カテゴリからランダム5
家々は既に戸を降し、ところどころに外灯の光が軒先を照らし、高い電柱の上にむき出しの電球がタングステンの鈍く輝いている線を高みを通る風に揺すられるように寒々と見せている。
野間 宏 / 暗い絵「暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
オレンジ色の常夜灯と、家々の軒先からこぼれるわずかな光があるだけで、道はほとんど真っ暗だ。
三浦 しをん「神去なあなあ日常 (徳間文庫)」に収録 amazon
地上の全てのものはまるで首をすくめるように闇の中で沈黙していた。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
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つららが何本も何本もじゅずのようになってかかる
宮沢 賢治 / なめとこ山の熊 amazon
春、 未だ地面に雪の残っている頃だった。
直哉, 志賀「暗夜行路 (新潮文庫)」に収録 amazon
広い窓の外、冬の初めのグレーが街を覆っているのを見つめていた。 この小さな街のすべての部分に、公園に、路に、霧のようにしみとおる冬の重い冷気を支え切れない。押されて息ができない。
吉本 ばなな / 満月 キッチン2「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon
長い冬に踏みしだかれた枯れ草が、寝そべったまま風に吹き殴られる
中島みゆき / 元気です「泣かないで・女歌」に収録 amazon
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