最初の 嵐 が襲ってきました。五月六日の夜のことです。強風がまず東南から吹きつけてきました。熟練した二十五人の水夫たちも 帆桁 をおろし 前檣 に小帆を揚げましたが、夜半には風波に舟を 委せるだけで、そのうち船の前方に裂け目が入り、浸水がはじまりました。ほとんど一晩の間、我々はこの裂け目に布をつめ、水を外にくみ出す作業を続けねばなりませんでした。
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 ページ位置:10% 作品を確認(amazon)
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嵐の中の船
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前後の文章を含んだ引用
......、帆は満足そうに膨れ、飛魚の群れが銀色に光りながら波間をはねるのがいつも見えました。私もガルペも毎朝、船中でのミサで航海の安全を主に感謝しつづけました。間もなく最初の嵐が襲ってきました。五月六日の夜のことです。強風がまず東南から吹きつけてきました。熟練した二十五人の水夫たちも帆桁をおろし前檣に小帆を揚げましたが、夜半には風波に舟を委せるだけで、そのうち船の前方に裂け目が入り、浸水がはじまりました。ほとんど一晩の間、我々はこの裂け目に布をつめ、水を外にくみ出す作業を続けねばなりませんでした。 夜が白み始めた頃、嵐はやっとやみました。水夫たちも私やガルペも、精根尽き果て、ただ船荷と船荷との間に体を横たえ、雨を含んだ真黒な雲が東に流れていくのをじっと見......
単語の意味
夜半(よわ・やはん)
夜半・・・夜の半ば。夜中。夜更け。
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風がマストに当ると不吉に鳴った。
小林多喜二 / 蟹工船
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黒い毒液をこねまわしたような海に、雪が白い睡眠薬のように降り注ぐ
加賀 乙彦 / 海霧 amazon
「乗り物」カテゴリからランダム5
射点で天空を指している実験ロケットは、あまりにも整然とし過ぎていて、怪獣映画に出てくるセットのように見える。
池井戸潤「下町ロケット (小学館文庫)」に収録 amazon
いきなりハンドルが切られて、車は狭い一方通行路に入った。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
「天災・荒れた天気」カテゴリからランダム5
火が燃え立つように、ちらりちらり白い波頭 が立っては消え、消えては立ちして、瞬間ごとに高さを増して行った。吹き荒れる風すらがそのためにさえぎりとめられて、船の周囲には気味の悪い静かさが満ち広がった。それを見るにつけても波の反対の側をひた押しに押す風の激しさ強さが思いやられた。
有島武郎 / 生まれいずる悩み
風の音、雨のしぶき、それから絶え間ない稲妻の光、――暫くはさすがの峨眉山も、覆 るかと思う位でした
芥川龍之介 / 杜子春
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